ウェブニュースより
米イラン、避けられるか全面衝突 今後のシナリオ ―― 【ワシントン=永沢毅、ドバイ=岐部秀光】米国とイランの対立はイラク駐留米軍に対するイランの直接攻撃で一気に高まった。米国の対応次第では本格的な武力衝突に発展しかねない。中東情勢はトランプ米大統領の就任後では最も緊迫した局面を迎えた。全面衝突の回避か、戦争に向け突き進むのか――。当面のシナリオを展望する。
■小競り合い、にらみ合いが長期化
米国人の死傷者は確認されていない。トランプ氏は米東部時間8日午前に声明を発表する見通しだが、米国人が被害を受けていない場合、当面は報復措置を控える可能性がある。
イラン国営メディアは「米側に多数の死者が出た」と主張するが、弾道ミサイルは米国人が集まる地域を避けて撃ち込まれたとの観測もある。国内向けには革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害に報復したと強調し、米側へは衝突激化を避けたいとのメッセージを送ったとの見方もできる。
イラン指導部は国民の反米感情や徹底報復を訴える保守強硬派に応える一方、体制を揺るがしかねない米国との全面衝突は避けたい。報復作戦「殉教者ソレイマニ」はぎりぎりの選択だった。
イランのザリフ外相はツイッターで、報復作戦がひとまず終了したと表明した。対立のエスカレーションを避けるための配慮が強くにじむ。
全面衝突は避けられても、小規模な砲撃などが散発する可能性は残る。収束への決め手を欠いたまま、緊張は続く。
■米が報復、全面的な軍事衝突へ
「イランがすべきでないことに踏み切れば、厳しい報いを受ける」。報復攻撃を受ける前、トランプ氏は反撃を予告していた。同氏に近い共和党のリンゼー・グラム上院議員は7日夜、トランプ氏と電話で話した後に「これ(イランの報復攻撃)は戦争行為だ。米大統領には対処に必要なあらゆる権限がある」と、保守系FOXニュースに述べた。
米国内では強硬派を中心に報復措置をとるべきだとの意見がある。それは、戦火が中東全域に拡大するリスクをはらむ。
米国が反撃すれば、イラン革命防衛隊はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、イスラエルのハイファといった親米国の主要都市を標的に、再び報復すると主張する。「テロリストの軍隊に基地を提供しているあらゆる米国の同盟国に警告する」との声明も公表した。
仮想敵のイスラエルに対しては、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラによる攻撃が考えられる。イスラエルの反撃対象はヒズボラに限らない。シリア、イラクの親イラン、シーア派武装組織のほか、イラン本土を攻撃する能力もある。強硬姿勢は、3月の総選挙でイスラエルの右派与党に追い風をもたらす。
■緊張緩和を模索、対立が収束に向かう
全面衝突を避けたい米国とイランが一転、対話の席に着く展開も考えられる。11月投票の米大統領選での再選を最優先するトランプ氏は戦争を避けたい。2019年6月にはイランによる米軍の無人機撃墜に報復する軍事行動を直前で撤回した。それは、戦線の拡大が米経済に打撃を与え、再選に悪影響を及ぼすと判断したためだとされる。
19年12月には米国とイランがそれぞれ拘束していた相手の国民の釈放を発表した。外交関係のない両国を取り持つスイスが仲介した。ほかにもいくつかの非公式なチャネルは存在してきたが、いまも機能するか不明だ。 (日本経済新聞 2020/1/8 20:13)
ゴーン被告会見、日産経営陣ら名指し批判 政府関係者には触れず ―― [レバノン/東京 8日 ロイター] - 保釈中に不正に日本を出国したカルロス・ゴーン被告は8日、レバノンで記者会見し、自身を追放した人物として日産自動車の経営陣など6人を名指しで批判した。逮捕は検察と日産に仕組まれていたと主張し、自らの潔白をあらためて強調した。日本の政府関係者には具体的に言及しなかった。
同被告が記者会見するのは逮捕後初めて。西川広人前社長のほか、前副社長の川口均氏、前監査役の今津英敏氏、社外取締役の豊田正和氏を批判した。豊田氏については日本の当局とつながっていたとも語り、「検察と日産の共謀が見えていなかったのは日本国民だけだ」と指摘した。
自らの不正を内部告発した元秘書室長の大沼敏明氏、ハリ・ナダ専務執行役員の名前も挙げた。
このうちの1人はロイターに対し、「言うべきことがあるなら、日本を不正に出国する前に裁判で公に言うべきだ。証拠を示さない陰謀説は冗談のように聞こえる」と語った。
<「逃亡は最も困難な決断」>
ゴーン被告は、追放されたのは日産から親会社の仏ルノー(RENA.PA)の影響を排除するためだったとし、「仏政府が3社連合に介入しようとしたことへの日本の反感もその一因だった」と述べた。逮捕されたことを日本軍が米軍を奇襲した真珠湾攻撃になぞらえた。
予告していた日本政府関係者の名前については「レバノン政府のため」として控えたが、「トップレベルが関わっていたとは思っていない」と語った。
自身の容疑については「根拠がなく、検察は誤った情報をリークして証拠を隠した」として「一連の容疑は事実ではない」とこれまでの主張を繰り返した。その上で、数週間以内に無実の証拠を明らかにする考えを示した。
ゴーン被告は「弁護士の同席なしに1日8時間にわたって尋問を受けた」、日本の有罪率は99%に達する国で、「外国人はおそらくもっと高い」と日本の司法制度を強く批判した。「自白しないと家族を追いかけることになると言われた」という。
弁護士からは判決が出るまで5年間は日本にいることになるだろうと言われたとし、逃亡は「私の人生で最も困難な決断だった」と語った。日本からの出国方法は支援者が明らかになるとして答えなかった。
東京地検の次席検事は会見後にコメントを出し、「わが国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない」と反論。「被告人ゴーンにわが国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる」とした。
<イスラエル入国を謝罪>
ゴーン被告は、不正送金の「財布」とみられている「CEOリザーブ」と呼ばれる予備費にも言及し、複数の責任者が署名した上で最終的に自身が承認するという手続きを経て支出できるものであり、「私が好き勝手にできるものではない」と釈明。日産の会社資金を不正に使用し、仏ベルサイユ宮殿で結婚披露宴を開いたなどとされる疑惑についても違法性を否定した。
また、「レバノン人であることを誇りに思うとし、困難なときに私の味方でいてくれた」と語った。同国と敵対関係にあるイスラエルに過去入国したことをレバノン国民に謝罪した。
<フィアットとの統合失敗は遺憾>
3社連合がフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)(FCHA.MI)(FCAU.N)との統合に失敗したことは遺憾だったと指摘。「2017年当初、3社連合は自動車グループとして首位にあり、成長していた。われわれはFCAを連合に迎える方向で準備し、エルカン会長と交渉中だった」とし、合意に向け昨年1月に会合を予定していたと明らかにした。さらに「われわれは多くの点で一致しており、対話は非常に良好だった。しかし、残念ながら結論に至る前に私は逮捕されてしまった」と述べた。
FCAはその後、仏プジョー・シトロエン(PEUP.PA)との合併で合意している。
<仏が見捨てないこと願う>
フランス政府の対応については、自分を見捨てないことを望むと表明。仏政府が自身を見捨てたと思うかとの質問に対し、「そうでないことを願う。わたしはフランス国民だ」と語った。
また金融・経済面で危機が深まるレバノンを巡り、ゴーン被告は自身に政治的な野心は無いとした上で、「私の経験を活かしてレバノンに仕えることを求められるなら、その用意がある」とした。
ゴーン被告は2018年11月、役員報酬を過少申告した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、東京地検により初めて逮捕された。
その後も別の金商法違反、会社法違反(特別背任)容疑で計3度逮捕。19年3月、初逮捕から108日目に東京拘置所から保釈された。さらに同年4月、別の会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕され、同月に再保釈。納付した保釈金は計15億円に上る。 (RUETERS 2020年1月8日 / 22:59 / 8時間前更新)
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