瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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黄楊(つげ)を詠んだ歌2
194211:古にありけるわざのくすばしき事と言ひ継ぐ.......(長歌)
標題:追同處女墓謌一首并短謌
標訓:追ひて處女(をとめ)の墓(つか)の謌に同(こた)へる一首并せて短謌
原文:古尓 有家流和射乃 久須婆之伎 事跡言継 知努乎登古 宇奈比牡子乃 宇都勢美能 名乎競争等 玉剋 壽毛須底弖 相争尓 嬬問為家留 感嬬等之 聞者悲左 春花乃 尓太要盛而 秋葉之 尓保比尓照有 惜 身之壮尚 大夫之 語勞美 父母尓 啓別而 離家 海邊尓出立 朝暮尓 満来潮之 八隔浪尓 靡珠藻乃 節間毛 惜命乎 露霜之 過麻之尓家礼 奥墓乎 此間定而 後代之 聞継人毛 伊也遠尓 思努比尓勢餘等 黄楊小櫛 之賀左志家良之 生而靡有  (感は女+感の当字)
        万葉集 巻194211
     作者:大伴家持
よみ:古(いにしへ)に ありける業(わざ)の 竒(くす)ばしき 事と言ひ継ぐ 智渟壮士(ちぬをとこ) 菟原壮士(うなひをとこ)の 現世(うつせみ)の 名を争ふと たまきはる 命(いのち)も捨てて 争ひに 嬬問(つまと)ひしける 処女(をとめ)らし 聞けば悲しさ 春花の にほえ栄えて 秋し葉し にほひに照れる 惜しき 身し盛りすら 大夫(ますらを)し 語()いたはしみ 父母に 申し別れて 家(いえ)(さか)り 海辺に出で立ち 朝夕(あさよひ)に 満ち来る潮し 八重波に 靡く玉藻の 節の間も 惜しき命を 露霜し 過ぎましにけれ 奥墓(おくつき)を ここと定めて 後し代し 聞き継ぐ人も いや遠に 偲ひにせよと 黄楊(つげ)小櫛(をぐし) しか刺しけらし 生()ひて靡けり
 
意訳:昔にあった出来事で、不思議なことと語り継がれて来た、智渟壮士と菟原壮士との世間の評判を競うとして、寿命を刻む、その命をも捨てて争うのに、二人が妻問いした乙女の話を聞けば悲しい事です。春の花が咲き誇り、秋には葉が黄葉して輝く、そのように輝く、惜しい身の盛りすら、立派な大夫たちの言葉を悲しんで、父母にこの世の暇を乞い、家を離れて海辺に出で立ち、朝夕に満ち来る潮の、たくさんの打ち寄せる波に靡く美しい藻の、その短い節のようなわずかのこの世の間も、惜しい命を、はかない露霜のように、乙女はこの世を過ぎ去ってしまったけれど、墓をここと定めて、後年に物語を聞き継ぐ人も、一層遠く、偲ぶよすがにしなさいと、黄楊の小さい櫛をこのように墓に捧げて手向けたらしい。それが育ってこのように葉を風に靡かせている。


194212: 娘子らが後の標と黄楊小櫛生ひ変り生ひて靡きけらしも
原文:乎等女等之 後能表跡 黄楊小櫛 生更生而 靡家良思母
           万葉集 巻194212
        作者:大伴家持
よみ:娘女(をとめ)らし後の標(しるし)と黄楊(つげ)小櫛(をぐし)()ひ更(さら)()ひて靡きけらしも
意訳:乙女の、その後のよすがの標と黄楊の小さな櫛が、生まれ変わりと茂って葉を茂らせ靡いているのでしょう。
左注:右、五月六日、依興大伴宿祢家持作之
注訓:右は、五月六日に、興に依りて大伴宿祢家持の之を作れり。
◎菟原処女の伝説(うないおとめ の でんせつ)とは、奈良時代より日本の摂津国菟原郡菟原(現在の兵庫県芦屋市および神戸市東灘区付近)での古の出来事として伝えられてきた、一人のおとめ(年若い女性)を巡る悲しい妻争いの伝説です。妻争い伝説(つまあらそい - )ともいいます。
 2人の男から求婚された娘が自ら命を絶ち、男達も後を追って死んでしまったというものです。
あらすじ兵庫県神戸市の東部地域から芦屋市域にかけて、当時の難波の先の湾の湿地帯に茂る葦(あし)を材として屋根を葺いた家々のあったことに由来する「葦屋(あしのや)」の地名で呼ばれていた頃の話です。
 菟原処女(うないおとめ)という可憐な娘がいて、多くの若者から思いを寄せられていた。中でも同じ里の菟原壮士(うないおとこ)と、和泉国から来た茅渟壮士(ちぬおとこ)という二人の立派な男性が彼女を深く愛し、妻に迎えたいと激しく争うようになりました。娘はこれを嘆き悲しみ、「卑しい私のために立派な男たちが争うのを見ると、生きていても結婚などできましょうか、黄泉で待ちます」と母に語ると自ら命を絶ってしまいました。茅渟壮士はその夜、彼女を夢に見て彼女が愛していたのは自分だと知り、後を追います。菟原壮士も負けるものかと小太刀をとって後を追ったのです。その後、親族たちは集まって、このことを長く語り継ごうと、娘の墓を中央に男の墓を両側に作ったといいます。


 

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目高 拙痴无
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1932/02/04
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くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
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