Themis(テミス)は「正義の女神」と見なされることが多いようですが、近代・現代的な意味での「正義」とは異なっています。むしろ、古代ギリシア語で正義に該当する神は、Dikē(ディケー)女神であるといわれます。ギリシア神話においては、Tītān(ティーターン)とÓlympos(オリュンポス)神の戦いの後、敗れたティーターンは主要な神の地位を失い、神話においても多くの神が言及されなくなり、また地位が低下しています。オリュンポスの時代になって、なおその地位と威勢を変わりなく維持した神はテミスだけなのであります。
Hēsíodos(ヘーシオドス)の『神統記』によると、ゼウスは二番目の妻としてテミスを娶り、二人のあいだには、Hōrai(ホーライ)の三女神が生まれました。更に、Klōthō(クロートー、長姉/紡ぐ者)、Lachesis(ラケシス、次女/測る者)、Atropos(アトロポス、末妹/切る者)のMoirai(モイライ)の三女神も生まれました。この結婚の成り行きについてはいささか不明な点が多いのであります。
Hēraklēs(ヘーラクレース)の第11番目の課題は、Hesperides(ヘスペリデース)の黄金の林檎を獲得することでありました。Apollodoros(アポロドーロス、古代ローマ時代のギリシャの著作家、1世紀から2世紀頃の人)によると、Hesperides(ヘスペリデース)の園を知る海神Nēreus(ネーレウス)の居場所をヘーラクレースに教えたNymphē(ニュンペー)たちは、ゼウスとテミスのあいだの娘であったといいます。またAischylos(アイスキュロス、BC525~456、古代ギリシアの三大悲劇詩人の1人)によれば、Promētheus(プロメーテウス)はテミスの子であるともいわれています。
※Hōrai(ホーライ)の三女神は、「うるわしい女たちで、 万物を生む者であり、定められた順序に従って昼と夜、夏と冬とを招来し、歳月の運行をつつがないものにしている」と言われました。ヘーシオドスによれば彼女らは三人で、エウノミアEunomia〔秩序〕、ディケーDivkh〔正義〕、エイレーネーEijrhvnh〔平和〕でありますが、一般には彼女たちは植物や花を生長させる自然の季節の女神とされ、アッティカでは彼女らはThalloタロー、Auxoアウクソー、Karpoカルポーとされています。しかしやがて彼女らは春夏(秋)冬の季節と同一視されるにいたりました。このようにホーラーたちは自然の正しい移り変わりと人間社会の秩序の二様の女神とみなされているのです。したがって彼女らは優雅な三人の美しい乙女の姿で表され、通常花あるいは植物を手にしています。
Eurynomē(エウリュノメー)は、Ōkeanos(オーケアノス)とTēthȳs(テーテュース)の娘で、ゼウスとの間に3人の典雅の女神Charites(カリテス)たちを設けました。すなわち、Aglaeā(アグライアー)・Euphrosynē(エウプロシュネー)・Thalia〈タレイアー〉の3柱「Three Graces」です。また一説に河神Āsōpos(アーソーポス)を生んだといいます。
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