ウェブニュースより
藤井聡太二冠「残り2局が大事」 順位戦の昇級持ち越し ―― 将棋の藤井聡太二冠が6日、第79期名人戦・B級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)9回戦で中村修九段(58)と対戦し、午後9時58分、94手で勝ち、今期順位戦の成績を8勝0敗とした。競争相手の棋士が敗れた場合、残り2局を残して昇級が決まる可能性もあったが、対象になった3棋士が全員勝ったため、藤井二冠のこの日の昇級決定は成らなかった。
終局直後の両対局者へのミニインタビューのうち、主なやりとりは、以下の通り。(取材時点では昇級の判断は定まっていない)
https://www.youtube.com/watch?v=gBYXTHtd-Dg
【藤井聡太二冠】
――相居飛車の力のこもった将棋だった。全体を振り返っての感想を。
「序盤は先手(=中村九段)の方が手厚い形になって、少し自信が無いのかなと思って、指していました。その後も、こちらの玉が結構、薄い局面が続いたので、分からなかったです」
――途中まではAI(人工知能)の評価値も五分五分の形が続いた。8筋を詰めた辺りから、藤井二冠に形勢が傾いたようなAIの評価だった。どの辺から手応えを感じた?
「8筋を詰めたところは、悪くはないかなとは思ったんですが、ただその後、どういう方針で指すかが難しくて。本譜は攻め合いにいったんですけど、少し(先手の攻めを)呼び込みすぎたかもしれない。その辺りは、分からなかったです」
――終盤、どのあたりで勝ちを意識されたのか?
「(78手目の)△6八歩と打つ手が見えて、勝ちを意識したわけではないですけど、少し行けそうかな、と思いました」
――最終盤で、先手の馬の位置をずらす、飛車のタダ捨て(=86手目の△8一飛)など格好いい手が出た。
「(次に)角を出た形(=88手目の△3五角)が厳しいので。行けそうかな、というふうには感じていました」
――本日の勝利で、今期順位戦は負け無しの8連勝で単独トップを走っている。順位戦での連勝が19に伸び、自己記録を更新した。
「一度負けた時は、また(連勝を)ここまで詰み重ねられるとは思っていなかった。ただ、順位戦は残り2局が大事だと思っているので、結果が出るように頑張りたいと思います」
――順位戦の通算成績は37勝1敗。驚愕の成績。持ち時間も長く、藤井二冠も「力を発揮できる棋戦」と言っている。これだけ強いのは、なにか特別な思いがあるのか。
「どの対局も同じ気持ちで臨んでいるつもりではあるんですけど。順位戦は、持ち時間が6時間と一番長いので、それが自分に合っているのかな、と思います」
――2021年の最初の対局だった。
「今年は年が明けてからわりとすぐに対局があったんですけど。普段通り指せたのかな、とは思います」
――年末年始は、どう過ごした?
「対局が無かったので、多少のんびりした気分ではあった。普段と同じように、ネットで練習対局をしたりして過ごしていました」
――今日の将棋は、藤井二冠が勝った場合、他の棋士の勝敗によっては昇級が決まる対局でした。この点は、意識した?
「特に……。目の前の一局に集中しよう、と思っていました」
【中村修九段】
――今日の将棋は、出だしで角換わりにはせずに、力戦調にされた。一局を振り返ると?
「今日はとにかく粘ろうと思って指してきたが、中央に模様を張る形になってしまい、攻める将棋かな、と。結果的に、ちょっと攻めてしまったんですけど、うまいタイミングで反撃されて。自分の思っていたイメージと違う展開になってしまったのが残念ではありましたね。こんなに、丁寧に受けられるとは思わなかった。途中から全然、攻めが続かないような形になってしまった。序盤で(41手目の)▲3五歩と突いていったのを後悔していました」
――藤井二冠との順位戦は初めて。特に印象に残った手は?
「鋭い手がいくつもあって、すごく気にしていました。本譜で、(64手目)△8五桂と跳ねたりとか、△8一飛とか。実際に指してみると、藤井二冠は長い時間じっくり読んで、しっかりとこちらの手を読み切る、という感じを、強く受けましたね。こちらは昭和の感覚で、『まあ、なんとかなるかな』という感じで攻めていったんですけど、どうもしっかりと読み切られてみますと、どれも息切れする変化が多くて。結果的に、しっかりと受けられて、反撃、という形。完敗という感じがしました」
――(72手目の△3四銀と)中村九段の飛車を取りに来られた時に(73手目の)▲6四歩という勝負手があったが。
「あれ、悪かったですか(苦笑)。底歩を打てないと、粘れないかと思って(6筋の歩を突き出した)。飛車を取る手もあるかもしれないですけど、底歩が打てないとダメかと思って、とりあえず、どっちかで取ってくれたらいいなと思って、(▲6四歩と)取り込んでみた。でもちょっと足りないかなと思いました。飛車を走った時に、歩とか受けて、弱気に指してくれれば、勝負になると思ってましたけど。強く、銀を立たれて、やっぱり辛いなと思っていました」
――今日は和服で、対局室入りも早かった。気合を感じました。
「お正月ですから(笑い)。たまに、和服で対局することはあって、前期も最終局、降級がかかった一番だったので和服を着た。藤井さんとは、なかなか指す機会も無いですから、自分自身に気合を入れよう、と。そういった意味で指していて、途中までは良かったんですけどね。肝心なところで集中できませんでした。それが悔やまれます」
――棋士会の会長として、棋士会のユーチューブに出演された時、「藤井さんとの対局をとても楽しみにしている」という発言がありました。指し終えての感想は?
「楽しかったですけどね。しかし、もう少し、良い勝負をしたかった、というのがちょっとだけ残念なところですね」 (朝日新聞DIGITAL 2021年1月7日 9時10分)
貴景勝、綱とりへ「いつも通り」 大相撲初場所10日初日 ――大相撲初場所(両国国技館)は10日に初日を迎える。11月場所で、稀勢の里以来となる大関として22場所ぶりの優勝を果たし、自身2度目の賜杯を抱いた貴景勝が初の綱とりに挑む。綱とりの壁となるはずだった横綱白鵬は新型コロナウイルスに感染し、出場は厳しい状況となったが、出場すれば進退を懸けて土俵に立つことになる横綱鶴竜、ともに初のかど番で尻に火が付いている正代、朝乃山の2大関、先場所の本割で敗れた照ノ富士など、越えなければならない障壁は多い。それでも貴景勝は「本当にいつも通り」と泰然とした口ぶりだ。
基礎鍛錬重ね、11月場所で結実
新型コロナウイルスに大きく左右された昨年を「見つめ直せた1年だった」と貴景勝は振り返る。3月は無観客開催となり、5月場所は中止。相撲を取る稽古ができない時期もあったが、「それが自分にとっていい気づきになった。基礎運動を増やしたことが大きい。応用よりもまずは当たる強さを磨こう、と根本的な意識が変わった」という。出稽古禁止や番付発表前の合同稽古などイレギュラーな調整が続く中、こつこつと四股やすり足、スクワットで下半身を重点的に鍛えてきた成果が11月場所で結実した。
基礎鍛錬が中心になったとはいえ、実戦も十分に積んできた。先場所前に続き2度目の開催となった12月の合同稽古には3日間参加。朝乃山との三番稽古に加え、白鵬に胸を借りた。「肌で感じるものが多く、得られたものがたくさんあった」と充実感を漂わせている。
立ちはだかるかど番の2大関
綱とりの難敵となるのが、ともに先場所を途中休場し、今場所がかど番の2大関だ。昨年の対戦成績は朝乃山に1勝2敗、正代には3連敗と分が悪い。朝乃山は「先輩大関に向かっていくだけ」。正代も「(相手が)綱とりだろうと負けたくない気持ちは変わらない」。かど番ということも相まって、いつも以上に闘志むき出しでぶつかってくるだろう。
2場所連続で全休中の鶴竜は先場所後に横綱審議委員会から「注意」の決議が出されたこともあり、次に本場所に出る時は並々ならぬ思いでの出場となる。腰の故障もあって、先月末にようやく同部屋の霧馬山と相撲を取る稽古を始めた。コンディションこそ十分とは言えないものの、出場となれば相当の覚悟で来るはずで、一筋縄ではいかないだろう。
周囲の注目とは裏腹に、本人には力みがない。「プロに入った時からいい成績を残したいと思って毎場所臨んできた。(初場所は)大事な場所だけれど、何かを変える必要はない」。突き押し一本で横綱になるのは難しいともいわれるが、「だからこそ目指す価値がある。無理と言われているからやりがいがある」と意に介さない。
「優勝するためには集中し切って自分の相撲を取るしかない」。欲を出さず、培ってきた押し相撲に徹するのみ。24歳の若武者はやるべきことをわきまえている。 (日本經濟新聞 2021年1月6日 11:00)
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