葦を詠める歌9
巻17-3975:我が背子に恋ひすべながり葦垣の外に嘆かふ我れし悲しも
巻17-3977:葦垣の外にも君が寄り立たし恋ひけれこそば夢に見えけれ
巻17-4006:かき数ふ二上山に神さびて立てる栂の木.......(長歌)
標題:入京漸近、悲情難撥、述懐一首并一絶
標訓:京(みやこ)に入らむこと漸(やくや)く近づき、悲情撥(はら)ひ難く、懐(おもひ)を述べたる一首并せて一絶
原文:可伎加蘇布 敷多我美夜麻尓 可牟佐備弖 多氏流都我能奇 毛等母延毛 於夜自得伎波尓 波之伎与之 和我世乃伎美乎 安佐左良受 安比弖許登騰比 由布佐礼婆 手多豆佐波利弖 伊美豆河波 吉欲伎可布知尓 伊泥多知弖 和我多知弥礼婆 安由能加是 伊多久之布氣婆 美奈刀尓波 之良奈美多可弥 都麻欲夫等 須騰理波佐和久 安之可流等 安麻乃乎夫祢波 伊里延許具 加遅能於等多可之 曽己乎之毛 安夜尓登母志美 之努比都追 安蘇夫佐香理乎 須賣呂伎能 乎須久尓奈礼婆 美許登母知 多知和可礼奈婆 於久礼多流 吉民婆安礼騰母 多麻保許乃 美知由久和礼播 之良久毛能 多奈妣久夜麻乎 伊波祢布美 古要敝奈利奈波 孤悲之家久 氣乃奈我家牟曽 則許母倍婆 許己呂志伊多思 保等登藝須 許恵尓安倍奴久 多麻尓母我 手尓麻吉毛知弖 安佐欲比尓 見都追由可牟乎 於伎弖伊加波乎志
万葉集 巻17-4006
作者:大伴家持
よみ:かき数(かぞ)ふ 二上山に 神さびて 立てる栂(つが)の木 本(もと)も枝(え)も 同じ常磐(ときは)に 愛(は)しきよし 吾(わ)が背の君を 朝(あさ)去(さ)らず 逢ひて言どひ 夕されば 手携(たづさ)はりて 射水川(いづみかは) 清き河内(かはち)に 出で立ちて 我が立ち見れば 東風(あゆ)の風 いたくし吹けば 水門(みなと)には 白波高み 妻呼ぶと 洲鳥(すとり)は騒く 葦刈ると 海人(あま)の小舟は 入江漕ぐ 楫(かぢ)の音高し そこをしも あやに羨(とも)しみ 偲ひつつ 遊ぶ盛りを 天皇(すめろぎ)の 食(を)す国なれば 御言(みこと)持ち 立ち別れなば 後(おく)れたる 君はあれども 玉桙の 道行く我は 白雲の たなびく山を 岩根踏み 越えへなりなば 恋しけく 日(け)の長けむぞ そこ思(も)へば 心し痛し 霍公鳥(ほととぎす) 声にあへ貫(ぬ)く 玉にもが 手に巻き持ちて 朝夕(あさよひ)に 見つつ行(ゆ)かむを 置きて行かば惜し
意訳:数を数える、一、二の、その二上山に、神々しくそびえ立つ栂の木の、幹も枝も等しく変わらない、そのようにいつも変わらず親しく思う私の大切な貴方を、毎朝、逢って語り合い、夕べには手を携えて射水川の清らかな河原に出で立って、私が立って眺めると、東の風が強く吹くと、湊には白波が高く、妻を呼ぶとて洲に住む鳥が騒ぐ。葦を刈ると漁師の小舟は、入り江を漕ぐ、その楫の音が高い。その情景がとても美しく羨ましく、心を惹かれて、風流を楽しむ最中ですが、天皇が治められる国であるので、その御命令を持って、出立して別れたら、後に残す貴方ではあるが、立派な鉾を立てる官道を行く私は、白雲の棚引く山を、岩根を踏み越え隔てたら、貴方を恋しいと思う日が長いでしょう。それを思うと、心が痛む。ホトトギスの声に時を合わせて薬玉を貫く、その玉であったなら、手に巻き持って、朝夕に見つめて行きましょう。後に残していくと残念です。
左注:右、大伴宿祢家持、贈掾大伴宿祢池主 四月卅日
注訓:右は、大伴宿祢家持の、掾大伴宿祢池主に贈れり 四月卅日
巻18-4094:葦原の瑞穂の国を天下り知らしめしける.......(長歌)
標題:賀陸奥國出金詔書謌一首并短謌
標訓:陸奥國より金の出せる詔書を賀ける謌一首并せて短謌
原文:葦原能 美豆保國乎 安麻久太利 之良志賣之家流 須賣呂伎能 神乃美許等能 御代可佐祢 天乃日飼等 之良志久流 伎美能御代々々 之伎麻世流 四方國尓波 山河乎 比呂美安都美等 多弖麻都流 御調寶波 可蘇倍衣受 都久之毛可祢都 之加礼騰母 吾大王能 毛呂比登乎 伊射奈比多麻比 善事乎 波自米多麻比弖 久我祢可毛 多能之氣久安良牟登 於母保之弖 之多奈夜麻須尓 鶏鳴 東國能 美知能久乃 小田在山尓 金有等 麻宇之多麻敝礼 御心乎 安吉良米多麻比 天地乃 神安比宇豆奈比 皇御祖乃 御霊多須氣弖 遠代尓 可々里之許登乎 朕御世尓 安良波之弖安礼婆 御食國波 左可延牟物能等 可牟奈我良 於毛保之賣之弖 毛能乃布能 八十伴雄乎 麻都呂倍乃 牟氣乃麻尓々々 老人毛 女童兒毛 之我願 心太良比尓 撫賜 治賜婆 許己乎之母 安夜尓多敷刀美 宇礼之家久 伊余与於母比弖 大伴能 遠都神祖乃 其名乎婆 大来目主登 於比母知弖 都加倍之官 海行者 美都久屍 山行者 草牟須屍 大皇乃 敝尓許曽死米 可敝里見波 勢自等許等太弖 大夫乃 伎欲吉彼名乎 伊尓之敝欲 伊麻乃乎追通尓 奈我佐敝流 於夜能子等毛曽 大伴等 佐伯乃氏者 人祖乃 立流辞立 人子者 祖名不絶 大君尓 麻都呂布物能等 伊比都雅流 許等能都可左曽 梓弓 手尓等里母知弖 劔大刀 許之尓等里波伎 安佐麻毛利 由布能麻毛利尒 大王能 三門乃麻毛利 和礼乎於吉弖且 比等波安良自等 伊夜多氏 於毛比之麻左流 大皇乃 御言能左吉乃 (一云 乎) 聞者貴美 (一云 貴久之安礼婆)
万葉集 巻18-4094
作者:大伴家持
よみ:葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らしめしける すめろきの 神の命の 御代重ね 天の日継と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方の国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調宝は 数へえず 尽くしもかねつ しかれども 我が大君の 諸人を 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地の 神相うづなひ すめろきの 御霊助けて 遠き代に かかりしことを 我が御代に 顕はしてあれば 食す国は 栄えむものと 神ながら 思ほしめして もののふの 八十伴の緒を まつろへの 向けのまにまに 老人も 女童も しが願ふ 心足らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠つ神祖の その名をば 大久米主と 負ひ持ちて 仕へし官 海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見は せじと言立て 大夫の 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖の子どもぞ 大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大君に まつろふものと 言ひ継げる 言の官ぞ 梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き 朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大君の 御言のさきの [一云 を] 聞けば貴み [一云 貴くしあれば]
意訳:葦原(あしはら)の瑞穂の国を(この日本国を)天から下ってきて治められた皇祖神。その神の命(みこと)が幾代も代を重ね、次々と代を日継ぎなされた。どの御代も治められている四方の国々には山や川があり、国土は広く豊か。なので献上申し上げる御宝は数えきれず、尽くしきれない。けれども、わが大君(天皇)は多くの人々を導かれ、立派な事業をお始めになったところ、黄金も確かにあるだろうとお思いになった。このことがずっと心におありになったところ、東の国は陸奥の小田なる山(宮城県遠田郡涌谷町)に黄金ありという報告をお受けになった。それが明らかになって、貴重なものと神々ともども喜び合われた。皇祖神の御霊の助けにより、遠い御代からの懸案だったことがこの御代に現実化した。これで、わが国土はますます栄えていくと神の御心でお思いになった。官人たちを心から平服なさって意のままに動かされ、老人も女子供も願う心を平安になさり、慰撫して治められた。このことを私は本当に尊く思い、ますます嬉しく思う。大伴の遠い祖先の神、その名も大久米主(あるじ)という誉れを背負ってお仕えしてきた官職。「海を行くなら水に沈む屍、山を行くなら草に埋もれる屍となって、大君の近くで死ぬのは本望。決して省みることはないと誓った一族。この大夫(ますらお)なる潔い名をいにしえより今の今まで受け継いできた子孫なるぞ。 大伴と佐伯の氏は祖先が立てた誓いのままに、子孫はその名を絶やさず、大君にお仕え申し上げる。そう言い継がれてきた官だぞ大伴は。梓弓を手に取り持って剣大刀を腰にしっかと帯び、守る。朝も夕も大君の御門を守るのは自分をおいて人はあるまいと、いよいよその思いはつのるばかり。大君の御言葉のありがたさの(一云「を」)内容を承れば尊い(一云「尊くてならない」)。
左注:天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之
注訓:天平感寶(かんぽう)元年(西暦749年)五月十二日、越中國守(えっちゅうのくにのかみ)の舘で大伴宿祢家持が之を作る。
◎「海(うみ)行(ゆ)かば、水漬(みづ)く屍(かばね)、・・・」の部分は、「海ゆかば(信時潔 作曲)」という曲のもとになっています。戦時中は、毎日のようにラジオから流れ、学校では歌わされました。
https://www.youtube.com/watch?v=PfBebI2oFp4
「白鵬のマナーはまねしないで」照ノ富士を満場一致で推薦の横審コメント ―― 日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が19日、都内で開かれ、日本相撲協会から諮問されたモンゴル出身の大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の、横綱推薦について審議。満場一致で推薦することを決めた。
▼杉田亮毅委員 序二段まで落ちてからの奮闘は相撲ファンを感動させるものがある。これはモンゴル版の「おしん」だ。横綱は模範でなければならない。白鵬の力強さに学びつつ、マナーの点はまねをしないで、堂々たる横綱になって欲しい。
▼山内昌之委員 これからは横綱としての所作、振る舞い。そういう姿で、子どもたちや将来相撲を目指す人に魅力ある対象になって欲しい。個人的に言えば、大リーグのエンゼルスの大谷翔平選手のように打ち込む姿で、誰にも憧れられるようなレベルの力士、横綱になってもらいたい。応援されるのにふさわしい横綱の姿を土俵の内外で示して欲しい。
▼丹呉泰健委員 本当によく戻ってきた。品格をどのように評価するかというと、第一に相撲道に対する情熱。そして相撲に精進する気迫を高く評価させていただきました。白鵬を出して申し訳ないですけど、日本の国技である相撲ですから品格が大事。品格を師匠の指導を受けながら、いろんな方の意見を踏まえて磨いてもらいたい。
▼高村正彦委員 昇進は当然。照ノ富士の筆舌に尽くしがたい努力。高く評価している。正々堂々と今のような相撲を取ってほしい。膝のけがが悪化しない限り、安定した横綱になるのでは。
▼都倉俊一委員 照ノ富士については全員が異存ない。厳しい親方のもと、相撲美学を実践してくれる横綱になってくれると望んでいる。
▼大島宇一郎委員 序二段から復活して、2場所連続優勝を遂げての名古屋場所千秋楽の全勝対決。そのストーリーが皆さんの心を動かしたのではないか。横綱不在の場所を牽引した実績は立派。戻ってきて精神的にも成長した。今後はより横綱にふさわしい相撲を取ってほしい。横綱には大関とは異なりより求められるものがある。それを理解して大横綱になってほしい。 [日刊スポーツ 2021年7月19日20時45分]
sechin@nethome.ne.jp です。
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