葛花 (裏見草(うらみぐさ)) (Arrow root)
・豆(まめ)科。
・学名
Pueraria lobata Pueraria : クズ属 lobata : 浅裂した
Pueraria(プエラリア)は、19世紀のスイスの植物学者Puerariの名前にちなむといいます。
・まわりの木々をつるでおおってしまう程の生命力。ひと夏で10mぐらい生長する。花は下の方から咲いていく。
・大和の国(奈良県)の国栖(くず)というところが葛粉の産地であったところからの命名です。漢字の「葛」は漢名から。
・つるの繊維部分は「葛布(くずふ)」の原料となります。(静岡県掛川市特産)
・根には、多量のでんぷんを含み、葛粉(くずこ)もとれる。 → 葛餅(くずもち)
・薬効 解熱、せきどめ、風邪
薬用部位 根 生薬名は「葛根(かっこん)」
・別名
「裏見草(うらみぐさ)」。葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから。
平安時代には「裏見」を「恨み」に掛けた和歌も多く詠まれた。
・秋風の 吹き裏返す 葛の葉の
うらみてもなほ うらめしきかな
古今集巻十五 恋 823 平貞文
(秋の風が吹きつけて、裏返した葛の葉。その裏返った葉を見ても――どれだけ恨みに思っても、なおあなたのことが恨めしいのだ。)
・ま葛原 なびく秋風 吹くごとに
阿太(あた)の大野の 萩の花散る
万葉集巻十2096 作者不詳
(葛が生い茂る原に秋風が吹くたびに、阿太の大野の萩の花が散っていく。)
※五條市の国道37号線の伊勢街道沿いに、西阿田町と東阿田町がある。阿太の大野はこのあたりではないだろうか。
・梨棗 黍に粟嗣ぎ 延(は)ふ葛の
後(のち)も逢はむと 葵花咲く
万葉集巻十六3834 作者不詳
(梨、棗と続くように、あなたに会いたい。葛のつるが別れてまたつながるように、またあなたに会いたい。あなたに逢う日は花咲くようにうれしい。)
※この歌は一つの言葉に音の似た複数の意味が掛けられた掛詞を用いています。
梨棗(リソウ) ⇒ 離早(リソウ、早々に離れた)
梨棗 ⇒ 離早(愛している人と離れている)※中国の古典より
黍(キビ)に粟つぎ ⇒ 君に逢わずに
延(は)ふ葛の後も逢はむと ⇒ 一度離れた葛の蔦が再び出会うように
梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の ⇒ 次々と作物が実りを迎えるように
梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢わんと ⇒(これらの作物が実り)季節が廻った後に逢いましょう
葵(アオイ)花咲く ⇒ 逢う日は(花が咲くように)嬉しい
・葛の風 吹き返したる 裏葉かな 高浜虚子
・葛葉稲荷神社
「葛の葉伝説」にまつわる狐が祀られている神社です。千年余り前、大阪の阿倍野の里に阿倍保名(あべやすな)という男が住んでいました。豪族だった父がだまされて所領を没収されたため、保名は家の再興を願い、信太明神に日参していました。ある日、保名が狩人に追われた白狐を助けたところ、葛の葉と名乗る女性が現れます。やがて保名と葛の葉の間には童子丸(後の陰陽師・安倍晴明)という子が誕生しますが、童子丸が5歳の時、葛の葉の正体が白狐であることがわかってしまいます。葛の葉が障子に書き残した歌「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」は、あまりにも有名です。この物語により、同社には子宝を願う人などが多く訪れます。
sechin@nethome.ne.jp です。
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