瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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1083fb28.JPG 至徳二載(757年)秋、杜甫は鳳翔(今の陝西省鳳翔県)から、家族の居る鄜州(陜西省冨県)にかえることになる。この年2月、肅宗の行在所は鳳翔に移っており、4月には杜甫は長安を逃れて危険を冒しながら鳳翔に至った。そこで左拾遺の職を授けられたが、宰相房琯(ぼうかん)が免職されると言う事件があり、親友琯のために弁護した杜甫も肅宗の怒りに触れたが、宰相の張鎬のとりなしで罪をまぬかれ8月1日鄜州の家族の下に帰ることを許されて、邠州(今の陝西省邠県)を経て家族の下に帰った。その時のことを詠じた長詩が「北征」である。この詩の原文は五言古体の長詩で、七百字を費やした大作である。

 9cb9f82f.JPG                北征
    杜甫
 皇帝二載秋  皇帝二載の秋
 閏八月初吉  閏八月初吉
 杜子將北征  杜子將に北征して
 蒼茫問家室  蒼茫家室を問はんとす
〈訳〉今上皇帝至徳二年秋/閏八月一日/私は北への旅に立とうとする/どうしているのか 家族の様子を見るために

 維時遭艱虞  維の時艱虞に遭ひ
 朝野少暇日  朝野暇日少し
 顧慚恩私被  顧みて恩私の被るを慚ず
 詔許歸蓬蓽  詔して蓬蓽に歸るを許さる
 拜辭詣闕下  拜辭す詣闕の下
 怵惕久未出  怵惕して久しく未だ出でず
 雖乏諫諍姿  諫諍の姿に乏しと雖も
 恐君有遺失  君が遺失有らんことを恐る
〈訳〉時は艱難にみち 心配事の多い時/朝野を問わず忙しい日々なのだ/思えは忝いことだ/天使は詔(みことのり)して 私があばら家に替えることを許された/おいとまごいに行在所の門にうかがったが/君の身を思い恐れ多くて 何時までも立ち去り難かった/私は天子を追いお諫めする役目にはふさわしくないのだが/君に何か落度でもあってはと心配なのだ

 君誠中興主  君は誠に中興の主なり
 經緯固密勿  經緯固より密勿たり
 東胡反未已  東胡反して未だ已まず
 臣甫憤所切  臣甫の憤りは切なる所
 揮涕戀行在  涕を揮って行在を戀ひ
 道途猶恍惚  道途猶ほ恍惚たり
 乾坤含瘡痍  乾坤瘡痍を含む
 憂虞何時畢  憂虞何れの時にか畢らん
〈訳〉まことに君は中興の英主であらせられ/国事の経営に精励されている/東の蛮族の反乱はまだ/続いている/臣たる私は憤りが胸にこみ上げてくる/涙をふるってお別れしたが 行在所のことを思い/道中もなお考え続けて茫然としてしまう/天も地も至る所 戦いの傷を受けている/この不安は何時になったらおわるものなのか

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