瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 本日は二十四節気の「啓蟄」。大地が暖まり冬眠をしていた虫が穴から出てくるころ。『暦便覧』には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と記されている。柳の若芽が芽吹き、ふきのとうの花が咲くころという。朝から雨模様。天気予報に拠れば、気温はあがるとのことであるが、今年は例年に比べて春の到来が遅いようだ。
 
 夢渓筆談 巻24より 陝北の石油
 鄜、延境內有石油、舊說「高奴縣出脂水」、即此也。生於水際、沙石與泉水相雜、惘惘而出、土人以雉尾甃之、用采入缶中。頗似淳漆、然之如麻、但煙甚濃、所沾幄幕皆黑。余疑其煙可用、試掃其煤以為墨、黑光如漆、松墨不及也、遂大為之、其識文為「延川石液」者是也。此物後必大行於世、自余始為之。蓋石油至多、生於地中無窮、不若松木有時而竭。今齊、魯間松林盡矣、漸至太行、京西、江南、松山大半皆童矣。造煤人蓋未知石煙之利也。石炭煙亦大、墨人衣。余戲為《延州詩》雲:「二郎山下雪紛紛、旋卓穹廬學塞人。化盡素衣冬未老、石煙多似洛陽塵。」
86b467cd.jpeg〔訳〕鄜州(ふしゅう)・延州〔いずれも陝西省北部〕には石油が出る。昔「高奴県〔延州領内にある漢代の県名〕には脂水(あぶらみず)がデル」といわれたのは、つまりこのことである。〔石油は〕水際に湧き出している。砂石とまざりあって、もくもくと湧き出す。土地の者は、雉の尾羽根をこれに浸して缶(かめ)の中に採りいれる。非常に真っ黒で、麻のようによく燃えるが、煙が濃くて、煙のかかった陣幕のたぐいは皆黒くなってしまう。わたしはこの油煙が使えるのではないかと思い、ためしに煤を掃き集めて墨を作ってみたところ、漆のように黒光りして、松煙墨も及ばない。そこで大々的に石油の煤の墨を作った。「延川石液」としるしてある墨がこれである。これは後々きっと大いに世に行われるものになろうが、わたしが初めて作ったものである。おもうに石油は非常に多量にあり、地中より生ずること無限で松の木がときに枯渇することがあるのとは違う。いま斉路一帯(山東)では松林が尽きてしまっていており、太行(山西)、京西(河南)から江南までしだいに松の山はほとんどみな禿山になっている。墨の煤をつくる業者たちが、まだ石油の油煙の利点を知らないからであろう。石炭の煙もまた濃いもので、着物を真っ黒にしてしまう。わたしがたわむれに作った「延州詩」がある。
04be3a1a.jpeg二郎山の下 雪紛々たり
旋(すなわ)ち穹盧(てんと)をたてて 塞人に学ぶ
素衣(しろきころも)も化尽(よご)れたれど冬はいまだ老いず
石煙多く似たり 洛陽の塵(じん)
 


2c98f246.jpeg※「石油」という言葉が用いられたのはこの沈括の文が初めてだという。沈括は、神宗の元裒3(1080)年、50歳のときに延州の知事および鄜延路経略使(軍政長官)を勤めたから、とりわけこの地の石油について詳しいのは当然である。
※『漢書』地理志に「高奴県にある洧水(いすい)は、然(もえ)ることができる」とあり、唐の段成式〔(だんせいしき、803? ~863? 年、唐の詩人)『西陽雑爼』には「高奴県の石脂水は、液体状のあぶらで、漆のように浮き上がり云々」とある。石油を実際に使い始めたのは、5~6世紀の南北朝時代で、その当時は、真っ黒でどろどろしていたところから「石漆」と呼ばれていたという。
※二郎山は宋代には延州に属した。陝西省安定県の南にある山。
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