檜扇を詠める歌25
巻20-4331:大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国は.......(長歌)
標題:追痛防人悲別之心作謌一首并短謌
標訓:追ひて防人の別れを悲しぶる心を痛みて作れる謌一首并せて短謌
原文:天皇乃 等保能朝庭等 之良奴日 筑紫國波 安多麻毛流 於佐倍乃城曽等 聞食 四方國尓波 比等佐波尓 美知弖波安礼杼 登利我奈久 安豆麻乎能故波 伊田牟可比 加敝里見世受弖 伊佐美多流 多家吉軍卒等 祢疑多麻比 麻氣乃麻尓々々 多良知祢乃 波々我目可礼弖 若草能 都麻乎母麻可受 安良多麻能 月日餘美都々 安之我知流 難波能美津尓 大船尓 末加伊之自奴伎 安佐奈藝尓 可故等登能倍 由布思保尓 可知比伎乎里 安騰母比弖 許藝由久伎美波 奈美乃間乎 伊由伎佐具久美 麻佐吉久母 波夜久伊多里弖 大王乃 美許等能麻尓末 麻須良男乃 許己呂乎母知弖 安里米具里 事之乎波良波 都々麻波受 可敝理伎麻勢登 伊波比倍乎 等許敝尓須恵弖 之路多倍能 蘇田遠利加敝之 奴婆多麻乃 久路加美之伎弖 奈我伎氣遠 麻知可母戀牟 波之伎都麻良波
万葉集 巻20-4331
作者:大伴家持
よみ:大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国は 敵守る おさへの城ぞと 聞こし食す 四方の国には 人さはに 満ちてはあれど 鶏が鳴く 東男は 出で向ひ かへり見せずて 勇みたる 猛き軍士と ねぎたまひ 任けのまにまに たらちねの 母が目離れて 若草の 妻をも巻かず あらたまの 月日数みつつ 葦が散る 難波の御津に 大船に ま櫂しじ貫き 朝なぎに 水手ととのへ 夕潮に 楫引き折り 率ひて 漕ぎ行く君は 波の間を い行きさぐくみ ま幸くも 早く至りて 大君の 命のまにま 大夫の 心を持ちて あり廻り 事し終らば つつまはず 帰り来ませと 斎瓮を 床辺に据ゑて 白栲の 袖折り返し ぬばたまの 黒髪敷きて 長き日を 待ちかも恋ひむ 愛しき妻らは
意訳:大君の、遠く離れた朝廷(みかど)たる筑紫の国(北九州)は外敵から身を守る抑えの砦。大君のお治めになっている四方の国々には人は多く満ちているけれども、とりわけ東男(あづまおとこ)は敵に向かって命をもかえりみない勇敢な兵士だと労をねぎらいなさる。任命されるままに母もとから離れ、あるいはなよやかな妻から離れ、任務につく。その日までの月日を数えながら難波の港に集結し、大船の梶を左右そろえて貫き並べる。朝なぎを見計らって、漕ぎ手を集め、夕潮に乗って、梶をたおし、軍団を率いていく貴君。波の間を押し分け、早く無事に筑紫にたどりついて、大君の任命のままに任務を果たそうとばかり。男子たる心を持って防備の任につく。任務が終わったらつつがなく(難波に)帰ってきなされと祈っています。神聖な酒かめを床の辺に据え、純白の着物の袖を折り返し、黒髪を敷いて長い日々を待っていることだろう、彼らの愛しい妻たちは。
左注:右二月八日兵部少輔大伴宿祢家持
注訓:右、二月の八日、兵部少輔大伴宿禰家持。
◎防人
古代,九州の辺要の地の守備にあてられた兵士です。防人の初見は大化2 (646) 年です。令制では防人司に属しました。防人は諸国から徴発され、3年交代で九州の防備にあてられました。手続は、国司が名簿を作成し、兵士を都へ送ると、都で兵部省の役人が検閲したのち、九州へ下し、防人司の役人が壱岐、対馬などに配置しました。史料によると天平2(730) 年諸国から徴集した防人を廃止、重ねて同9年諸国からの防人を本国に帰還させ、九州の兵士に守らせることにしたとあります。さらに天平宝字1(757) 年、東国の防人を徴することをやめ、九州の兵士をあてましたが、天平神護2(766)年大宰府は東国の兵士を防人にあてることを申請しています。以後、改訂を繰返したが、寛平6(894) 年対馬の防人の記事が最後の所見です。『万葉集』中の防人歌は、真情あふれているので有名です。
巻20-4455:あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ
※橘諸兄(たちばなもろえ、684~757年)
奈良時代の政治家です。皇族の出身で敏達天皇5世の子孫になります。父は従四位下美努 (みぬ) 王。母は県犬養橘三千代 (あがたのいぬかいのたちばなのみちよ) 、室は藤原不比等の娘多比能で、本名は葛城王です。和銅3(710)年従五位下、以後累進して、天平3(731)年参議、同8年弟の作為王とともに、朝廷に請うて、母の氏姓橘宿禰姓を賜わり、名を諸兄と改めました。同9年大悪疫のため、藤原4卿(武智麻呂、房前、宇合、麻呂) の死没後,大納言、右大臣と躍進し、唐から帰国した玄昉、吉備真備らと結んで政界の新興勢力を形成、全盛期を迎えます。しかし、天平末年以降藤原広嗣の乱、恭仁京経営の失敗、権臣藤原仲麻呂の台頭によって、権勢は影をひそめていきました。玄昉、真備らも左遷され、天平勝宝8(756) 年官を辞し、失意のうちに没しました。
巻20-4489:うち靡く春を近みかぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ
※甘南備伊香真人(かむなびいかごのまひと、生没年不明)
746(天平18)年4月、無位より従五位下に叙せられます。同年8月、雅楽頭。749(天平勝宝1)年7月、従五位上に昇叙します。751(天平勝宝3)年10月、高城王・池辺王と共に甘南備真人を賜姓されます。757(天平宝字1)年12.8、大監物三形王宅の宴に臨席、歌を詠んですます(巻20-4489)。この時大蔵大輔(おおくらたいふ)でした。翌年2月、式部大輔中臣清麻呂宅の宴に臨席、3首を残しています(巻20-4502・4510・4513)。この時も大蔵大輔でした。いずれの宴も大伴家持が同席しています。761(天平宝字5)年10月、美作守(みまさかのかみ)になります。宝字7年1月には、備前守となります。翌年1月には、主税頭(ちからのかみ)、768(神護景雲2)年閏6月、越中守。772(宝亀3)年1月、正五位下。777(宝亀8)年1月、正五位上。以後の消息は不明です。重職を歴任しましたが、孝謙・淳仁・称徳朝を通じて昇叙に恵まれず、光仁朝に至って復権された観があります。万葉には上記4首のみがのおさめられています。
ウェブニュースより
大谷翔平「大惨事から極上へ」3年ぶり白星を米メディア報じる ―― <レンジャーズ4-9エンゼルス>◇26日(日本時間27日)◇グローブライフフィールド
エンゼルス大谷翔平投手(26)が18年5月20日のレイズ戦以来、1072日ぶりの白星を手にした。レンジャーズ戦で5回3安打4失点、9奪三振。DH解除のリアル二刀流として「2番投手」を担い、打っては2安打2打点3得点。6回の第4打席では日米で初のバント安打もマークした。
◇ ◇ ◇
大谷の3年ぶりの白星を米メディアも次々と報じた。MLB公式サイトと米CBSスポーツは、ベーブ・ルース以来となった本塁打数リーグトップでの先発登板に「歴史をつくった」と速報。地元紙ロサンゼルス・タイムズ電子版は、初回の乱調からの見事な立ち直りに「大惨事から極上へ」との見出しを付け、地元紙OCレジスター電子版は「投手大谷は完璧ではなかったが、打者大谷がそれでも十分だと示してくれた」と、二刀流ならではの活躍ぶりを伝えた。 [日刊スポーツ 2021年4月27日18時10分]
檜扇を詠める歌24
巻19-4160:天地の遠き初めよ世間は常なきものと.......(長歌)
標題:悲世間無常謌一首并短謌
標訓:世間(よのなか)の常(つね)無きを悲しびたる謌一首并せて短謌
原文:天地之 遠始欲 俗中波 常無毛能等 語續 奈我良倍伎多礼 天原 振左氣見婆 照月毛 盈興之家里 安之比奇能 山之木末毛 春去婆 花開尓保比 秋都氣婆 露霜負而 風交 毛美知落家利 宇都勢美母 如是能未奈良之 紅能 伊呂母宇都呂比 奴婆多麻能 黒髪變 朝之咲 暮加波良比 吹風能 見要奴我其登久 逝水能 登麻良奴其等久 常毛奈久 宇都呂布見者 尓波多豆美 流啼 等騰米可祢都母
万葉集 巻19-4160
作者:大伴家持
よみ:天地し 遠き初めよ 世の中は 常なきものと 語り継ぎ 流らへ来たれ 天つ原 振り放け見れば 照る月も 満ち起きしけり あしひきの 山し木末(こづゑ)も 春されば 花咲きにほひ 秋づけば 露霜負(を)ひて 風交り もみち散りけり うつせみも かくのみならし 紅(くれなゐ)の 色もうつろひ ぬばたまの 黒髪変り 朝し咲(ゑ)み 夕変らひ 吹く風の 見えぬがごとく 行く水の 止まらぬごとく 常もなく うつろふ見れば にはたづみ 流るる涙 留めかねつも
意訳:天地創造の遠い昔の初めから、世の中は定まるものがないものだと、語り継がれて、時を流れて来た。天の原を振り仰いで眺めると、照る月も満ち昇ってくる。葦や檜の生える山の梢も、春になって来ると花が咲きほこり、秋になると、霜露を負って吹く風に交じって黄葉が散ります。この世も、このような姿です。紅の顔色もやがて移ろい衰え、漆黒の黒髪も変わり、朝に幸福の頬笑みも、夕べには変わってしまい、吹く風の姿が見えないように、流れ逝く水が留まらないように、定まることなく、流れ逝くと、庭に溢れるように、流れる涙は、留めることができません。
巻19-4166:時ごとにいやめづらしく八千種に.......(長歌)
標題:詠霍公鳥并時花謌一首并短謌
標訓:霍公鳥(ほととぎす)に并せて時の花を詠(よ)める謌一首并せて短謌
原文:毎時尓 伊夜目都良之久 八千種尓 草木花左伎 喧鳥乃 音毛更布 耳尓聞 眼尓視其等尓 宇知嘆 之奈要宇良夫礼 之努比都追 有争波之尓 許能久礼罷 四月之立者 欲其母理尓 鳴霍公鳥 従古昔 可多理都藝都流 鴬之 宇都之真子可母 菖蒲 花橘乎嬬良我 珠貫麻泥尓 赤根刺 晝波之賣良尓 安之比奇乃 八丘飛超 夜干玉之 夜者須我良尓 暁 月尓向而 徃還 喧等余牟礼杼 何如将飽足
万葉集 巻19-4166
作者:大伴家持
よみ:時ごとに いやめづらしく 八千種(やちくさ)に 草木花咲き 鳴く鳥の 声も変らふ 耳に聞き 目に見るごとに うち嘆き 萎えうらぶれ 偲(しの)ひつつ 争(あらそ)ふはしに 木の暗(くれ)の 四月(うづき)し立てば 夜(よ)隠(ごも)りに 鳴くほととぎす いにしへゆ 語り継ぎつる うぐいすの 現(うつ)し真子かも あやめぐさ 花橘を 娘女(をとめ)らが 玉貫くまでに あかねさす 昼はしめらに あしひきの 八(や)つ峯(を)飛び越え ぬばたまの 夜はすがらに 暁(あかとき)の 月に向ひて 行き帰り 鳴き響(とよ)むれど なにか飽き足らむ
意訳:四季それぞれに、ますます目も新たに、種々に草木は花が咲き、それにつれて鳴く鳥の声も変わってゆく。その鳥の声を耳に聞き、その花のさまを目にするたびに、溜息をつき、深く心打たれて賞でながら、どれがいちばんよいか決めかねているうちに、木の下闇の四月ともなると、夜の闇の中に鳴く時鳥、このめでたい声の鳥は遥けくも遠き時代から言い伝えてきているように、まさしく鶯のいとし子なのだな、菖蒲や花橘をおとめたちが薬玉に通す五月まで、あかねさす昼はひねもす、山の峰々を飛び越え、ぬばたまの夜は夜もすがら、明け方の月に向かって、往ったり来たりしては鳴き立てているけれども、何で聞き飽きるなどということがあろうか。聞いても聞いても飽きることはない。
左注:右廿日雖未及時依興預作也
注訓:右は二十日、いまだ時にいたらねども、興によりて豫(かね)てつくれり。
ウェブニュースより
ワクチン接種、世界で10億回突破 低所得国は進まず ―― 新型コロナウイルスのワクチンの接種回数が25日までに世界全体で10億回を超えたことが英オックスフォード大の研究者らがまとめたデータベースで分かった。先行する米国と中国が全体の4割超を占める一方で、アフリカなど低所得国での接種は進んでいない。ワクチン接種をめぐる格差が浮き彫りになった。
英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、世界全体で25日までに10億1000万回の新型コロナワクチンが投与された。このうち米国が最多で約2億2500万回、中国が約2億2000万回と続いた。
感染が急拡大するインドは約1億3800万回と累計接種回数では米中に次ぐ水準だった。だが全人口のうち少なくとも1回目の接種を受けた人の割合は8%台にとどまる。
日米欧でいち早く接種を始め、感染者数の増加抑制につなげた英国の接種回数は約4500万回だった。日本は約250万回にとどまり、主要7カ国(G7)のなかでは最も少ない。
人口あたりの接種回数はブータンやイスラエルが多かった。インドからワクチン提供を受けたブータンでは一度でも接種を受けた人の比率は75%。イスラエルでは62%にのぼり、すでに人口の半数以上が接種を完了した。アラブ首長国連邦(UAE)でも接種の完了率は4割近くと高い。
一方で世界人口の2割弱を占めるアフリカ大陸での接種回数は約1670万回と世界の2%弱にとどまる。財政事情から自前で十分な量を調達できない国が多く、新型コロナワクチンを共同購入して途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」が頼りとなっている。
日米欧などは6月に新型コロナワクチンの供給を途上国に広めるためのワクチンサミットのオンラインでの開催を計画する。COVAXについて各国の拠出額の上乗せを協議する見通しだ。ワクチン分配の不均衡を解消するため、途上国へのワクチン普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」などは各国に拠出拡大を呼びかける。 【日本經濟新聞 2021年4月26日 12:21】
檜扇を詠める歌23
巻18-4072:ぬばたまの夜渡る月を幾夜経と数みつつ妹は我れ待つらむぞ
巻18-4101:珠洲の海人の沖つ御神にい渡りて.......(長歌)
標題:為贈京家、願真珠謌一首并短謌
標訓:京の家に贈らむが為に、真珠(しらたま)を願(ほり)せる謌一首并せて短謌
原文:珠洲乃安麻能 於伎都美可未尓 伊和多利弖 可都伎等流登伊布 安波妣多麻 伊保知毛我母 波之吉餘之 都麻乃美許等能 許呂毛泥乃 和可礼之等吉欲 奴婆玉乃 夜床加多古里 安佐祢我美 可伎母氣頭良受 伊泥氏許之 月日余美都追 奈氣久良牟 心奈具佐余 保登等藝須 伎奈久五月能 安夜女具佐 波奈多知波奈尓 奴吉麻自倍 可頭良尓世餘等 都追美氏夜良牟
万葉集 巻18-4101
作者:大伴家持
よみ:珠洲(すす)の海人(あま)の 沖つ御神に い渡りて 潜(かづ)き取るといふ 鰒玉(あはびたま) 五百箇(いほち)もがも はしきよし 妻の命(みこと)の 衣手の 別れし時よ ぬばたまの 夜床片凝(かたこ)り 朝寝髪 掻きも梳(けづ)らず 出でて来(こ)し 月日数(よ)みつつ 嘆くらむ 心(こころ)慰(なぐさ)に 霍公鳥(ほととぎす) 来鳴く五月(さつき)の 菖蒲草(あやめくさ) 花橘に 貫き交(まじ)へ 蘰(かつら)にせよと 包みて遣らむ
意訳:珠洲の海人が沖の御神の島に渡って、潜って取ると云う、アワビ珠を、たくさん、たくさんも欲しい。いとしい妻である貴女の衣の袖を分かちて別れた時から漆黒の夜の床は当時を留め、朝に寝乱れ髪を掻き梳かず、部屋から出て来て、別れからの月日を数えて、嘆いているでしょう。その心を慰めるために、ホトトギスが飛び来て鳴く五月の菖蒲草と、花橘とを共に薬玉に貫き交え蘰にしなさいと、アワビ珠を包んで贈りたい。
左注:右、五月十四日、大伴宿祢家持依興作
注訓:右は、五月十四日に、大伴宿祢家持の興に依りて作る
ウェブニュースより
衆参3選挙、自民「全敗」 菅政権発足初の国政選 衆院北海道2区・松木氏 参院長野・羽田氏 参院広島・宮口氏 ―― 衆院北海道2区、参院長野選挙区の両補欠選挙、参院広島選挙区の再選挙が25日、投開票された。自民党は与野党対決となった長野と広島でいずれも敗れ、候補擁立を見送った北海道2区を含めて1議席も得られなかった。菅義偉首相は政権運営の立て直しが必要になる。
3選挙は2020年9月の菅政権発足後初めての国政選挙で、各党は今年秋までにある衆院選の前哨戦と位置づけていた。新型コロナウイルスへの対応や「政治とカネ」を巡る問題が争点だった。
参院広島選挙区の再選挙は河井案里氏(自民を離党)の公職選挙法違反事件による当選無効に伴う。立憲民主党などが推薦し共産党も支援した諸派新人の宮口治子氏が事実上の与野党一騎打ちに勝利した。
自民が擁立した新人の西田英範氏は事件の影響で組織を固めきれず届かなかった。
参院長野選挙区は立民の新人、羽田次郎氏が20年末に新型コロナに感染し死去した兄の雄一郎氏の「弔い選挙」を掲げた。共産、国民民主、社民各党の推薦を受けて臨んだ。
自民新人で元衆院議員の小松裕氏は新型コロナ対策の強化などを訴えたものの、支持が広がらなかった。
衆院院北海道2区補選は収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相(自民を離党)の議員辞職を受けた。立民が擁立した元職の松木謙公氏は野党共闘の枠組みで優位に選挙戦を進めた。日本維新の会の新人候補らは届かなかった。
投開票日の25日、東京や大阪などで新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言の適用が始まった。感染収束へ出口が見えない状況で、政権の対応を巡る有権者の審判となった。7月4日投開票の東京都議選や、首相の衆院解散戦略にも影響を与えかねない。
投票率は衆院北海道2区が30.46%、参院長野選挙区が44.40%でいずれも過去最低を記録した。参院広島選挙区は33.61%だった。 【日本經濟新聞2021年4月25日 20:56 (2021年4月26日 0:49更新)】
檜扇を詠める歌22
巻17-3962:大君の任けのまにまに大夫の心振り起し.......(長歌)
標題:忽沈狂疾、殆臨泉路。仍作謌詞、以申悲緒一首并短謌
標訓:忽(たちま)ちに狂疾(きうしつ)に沈み、、殆(ほとほと)に泉路に臨めり。仍りて謌詞(かし)を作りて、以ちて悲緒(ひしよ)を申べたる一首并せて短謌
原文:大王能 麻氣能麻尓々々 大夫之 情布里於許之 安思比奇能 山坂古延弖 安麻射加流 比奈尓久太理伎 伊伎太尓毛 伊麻太夜須米受 年月毛 伊久良母阿良奴尓 宇津世美能 代人奈礼婆 宇知奈妣吉 等許尓許伊布之 伊多家苦之 日異益 多良知祢乃 婆々能美許等乃 大船乃 由久良々々々尓 思多呉非尓 伊都可聞許武等 麻多須良牟 情左夫之苦 波之吉与志 都麻能美許登母 安氣久礼婆 門尓餘里多知 己呂母泥乎 遠理加敝之都追 由布佐礼婆 登許宇知波良比 奴婆多麻能 黒髪之吉氏 伊都之加登 奈氣可須良牟曽 伊母毛勢母 和可伎兒等毛婆 乎知許知尓 佐和吉奈久良牟 多麻保己能 美知乎多騰保弥 間使毛 夜流余之母奈之 於母保之伎 許登都氏夜良受 孤布流尓思 情波母要奴 多麻伎波流 伊乃知乎之家騰 世牟須辨能 多騰伎乎之良尓 加苦思氏也 安良志乎須良尓 奈氣枳布勢良武
万葉集 巻17-3962
作者:大伴家持
よみ:大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに ますらをが 心振り起し あしひきの 山坂越えて 天離る 鄙に下り来(き) 息だにも いまだ休めず 年月も いくらもあらぬに うつせみの 世の人なれば うち靡き 床に臥(こ)い伏し 痛(いた)けくし 日に異(け)にまさる たらちねの 母の命(みこと)の 大船の ゆくらゆくらに 下恋(したこひ)に いつかも来むと 待たすらむ 心さぶしく はしきよし 妻の命(みこと)も 明けくれば 門に寄り立ち 衣手を 折り返しつつ 夕されば 床打ち払ひ ぬばたまの 黒髪敷きて いつしかと 嘆かすらむぞ 妹(いも)も兄(せ)も 若き子どもは をちこちに 騒き泣くらむ 玉桙の 道をた遠(とほ)み 間使(まつかひ)も 遺(や)るよしもなし 思ほしき 言伝(ことつ)て遣(や)らず 恋ふるにし 心は燃えぬ たまきはる 命惜しけど 為(せ)むすべの たどきを知らに かくしてや 荒(あら)し男(を)すらに 嘆き伏せらむ
意訳:大君の仰せに従って、ますらおの雄々しい心を奮い起こして、山を越え坂を越え、はるばるこの遠い鄙の地に下って来て、まだ息も休めず年月もどれほども経っていないのに、はかない世に住む人間のこととて、ぐったりと病の床に横たわってしまって、苦しみは日に日につのるばかりだ。懐かしい母君が、大船の揺れるようにゆらゆらと落ち着かず、心待ちにいつ帰ることかと恋い焦がれておられるお気持ちは、思いやるだけでさびしいし、いとしくてならない大事な妻も、夜が明けてくると門に寄り添って立ち、夕ともなると袖を折り返しては床を払い清めて、独りさびしく黒髪を靡かせて伏し、早く帰って来てほしいと嘆いてくれていることであろう。女の子も男の子も幼い子どもたちは、あっちこっちで騒いだり泣いたりしていることであろう。とはいえ、道のりははるかに遠く、ちょいちょい使いをやる手だてもない。言いたいことを言ってやることもできずに恋い慕うにつけても、心は熱く燃え上がるばかりだ。限りある命は惜しく何とかしたいと思うけれど、どうしたらよいのか手がかりもわからず、こうして豪胆であるべき男子たるものが、ただめめしく嘆き臥してばかりいなければならぬというのか。
左注:右天平十九年春二月廿日越中國守之舘臥病悲傷聊作此歌
注訓:右は、天平十九年春二月二十日、越中国守の館にして、病に臥し悲しみ傷みて、聊かこの歌を作れり。
巻17-3980:ぬばたまの夢にはもとな相見れど直にあらねば恋ひやまずけり
巻17-3988:ぬばたまの月に向ひて霍公鳥鳴く音遥けし里遠みかも
ウェブニュースより
バイデン氏「約束履行は道義的責任」 脱炭素の議論加速 ―― バイデン米大統領は23日、同日閉幕した気候変動に関する首脳会議(サミット)で「我々が約束を守ることが将来世代への道義的責任だ」と述べ、各国が温暖化ガスの排出削減目標を着実に実行するよう呼びかけた。
2日間の日程でオンラインで開いた会議は23日、温暖化ガスの排出を抑える技術革新や経済・雇用への影響を議論して閉幕した。開催の旗振り役だったバイデン氏は「歴史的なサミットが終わる。いくつかの重要な進展があった」と強調した。
11月に英国で開く第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の履行を話し合う。バイデン氏は「我々はこの機会をつかめる」と述べ、COP26に向けて脱炭素の議論が盛り上がることに期待を示した。
バイデン氏は、2030年度までに温暖化ガスを13年度比46%減らす日本の新目標について「野心的な目標が発表されたことを歓迎する」と評価した。米国は22日、05年に比べて実質排出量を50~52%減らす目標を発表した。カナダや英国も会議に合わせて新目標を打ち出した。
緊張関係にあるロシアにも秋波を送った。バイデン氏は「プーチン大統領が先進的な二酸化炭素の除去で世界に連携を呼びかけたことに励まされた」と語った。
ホワイトハウスは会議の閉幕後、米国が強化する取り組みの事例を並べた文書を公開した。途上国の支援額については24年までに、オバマ政権2期目の平均から倍増させる。会議に参加したアフリカなど途上国の首脳からは、温暖化による海水面の上昇や頻発する災害への懸念が相次いだ。 【日本經濟新聞 2021年4月24日 6:54 (2021年4月24日 7:57更新)】
檜扇を詠める歌21
巻16-3805:ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば
巻16-3844:ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒し思ほゆるかも
◎この歌には「左注」がついています。
左注:右謌者、傳云有大舎人土師宿祢水通、字曰志婢麿也。於時大舎人巨勢朝臣豊人、字曰正月麿、与巨勢斐太朝臣(名字忘之也 嶋村大夫之男也)兩人、並此彼皃黒色焉。於是、土師宿祢水通作斯謌咲者。巨勢朝臣豊人、聞之、即作和謌酬咲也
注訓:右の謌は、傳へて云はく「大舎人土師宿祢水通(みみち)といへるあり、字(あざな)を志婢麿(しびまろ)と曰ふ。時に、大舎人巨勢朝臣豊人(とよひと)、字を正月麿(むつきまろ)と曰へると巨勢斐太朝臣(名(な)字(あざな)は忘る。 嶋村大夫の男(をこと)なり)との兩人(ふたり)、並(とも)に此(これ)彼(それ)の皃(かほ)黒色なり。ここに、土師宿祢水通この謌を作りて咲ふ。巨勢朝臣豊人、これを聞きて、即ち和(こた)ふる謌を作りて酬(こた)へ咲(わら)ふ」といへり。
注訳:右の歌は伝えて云うには「大舎人の土師宿祢水通と云う者がいた。字を志婢麿と云った。ある時、大舎人の巨勢朝臣豊人、字を正月麿と云う、と巨勢朝臣斐太(名と字は忘れた、嶋村大夫の息子である)との二人、共にどちらともに顔の色が黒かった。そこで、土師宿祢水通がこの歌を作って笑った。巨勢朝臣豊人がそれを聞いて、そこでその歌に応える歌を作って応酬して笑った」という。
◎飛騨地方の万葉歌です。元々はこの地方を表すのに「斐太」あるいは「斐陀」の字が当てられていました。「ぬばたま」は黒にかかる枕詞。『続日本記』の記録には702(大宝2)年に斐太国が神馬を献じたとあります。この歌にある大黒というのがその馬のこと。文武天皇がこれを瑞祥として天下に大赦を行ったのを機に「飛騨」の文字になったといいます。ただ、この歌は巨勢豊人(こせのとよひと)という二人の友人を「小黒」と呼んで揶揄した戯笑歌です。二人とも相当色が黒かったようです。ただし、豊人さんはやられたらしっかりやり返しています。
原文:造駒 土師乃志婢麿 白尓有者 諾欲将有 其黒色乎
よみ:訓読 駒造る土師(はじ)の志婢麿(しびまろ)白にあば諾(うべ)欲(ほ)しからむその黒色(くろいろ)を
訳:埴輪の駒を造る土師の志婢麿よ。埴輪の駒が白いので、なるほど欲しいだろう。埴輪の駒を塗る、その黒色を。
※土師水通(はじの みみち、生没年不明)
奈良時代の官吏。大舎人。天平2年(730)大宰帥(だざいのそち)大伴旅人がもよおした梅花の宴でよんだ歌や、同僚の巨勢豊人(こせの-とよひと)らの色がくろいことをからかった歌などが、「万葉集」巻4,5、16にあわせて4首おさめられています。字(あざな)は志婢麻呂(しびまろ)。名は御道とも書きます。
※巨勢豊人(こせのとよひと、生没年不明)
奈良時代の官吏です。大舎人(おおとねり)をつとめました。同僚の土師水通(はじの-みみち)に顔がくろいことを歌でからかわれ、ただちにきりかえした歌が「万葉集」におさめられています。字(あざな)は正月麻呂(むつきまろ)。
巻17-3938:かくのみや我が恋ひ居らむぬばたまの夜の紐だに解き放けずして
※平群女郎(へぐりのいらつめ、生没年未詳)
系譜等未詳。平群氏は大和国平群郡平群郷(奈良県生駒郡平群町)付近を本拠地とした豪族で、武内宿禰の後裔氏族と伝わります。姓は初め臣、天武十三年(684)以後朝臣。大伴家持の傍妻あるいは恋人でした。
巻17-3955:ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ
※土師道良(はじの-みちよし、生没年不明)
奈良時代の官吏。天平18年(746)越中守大伴家持の館でひらかれた宴席でよんだ歌1首が「万葉集」巻17におさめられています。このとき越中(富山県)の史生(ししょう)であったといいます。
ウェブニュースより
ペースXの宇宙船打ち上げ成功、星出さん搭乗 ―― 日本人宇宙飛行士の星出彰彦さんが搭乗する米スペースXの新型有人宇宙船「クルードラゴン」が23日、打ち上げられた。民間の宇宙船として機体を初めて再利用した。低コストで人が宇宙を往復できるようになり、宇宙の産業利用が加速する。
米東部時間23日午前5時49分(日本時間同日午後6時49分)、米南部フロリダ州のケネディ宇宙センターから星出さんら4人が乗った新型船が飛び立った。所定の軌道に機体を投入し、打ち上げは成功した。24日朝(日本時間同日夜)に国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、半年間滞在する。
クルードラゴンの有人飛行は2020年5月、同11月に続いて3回目。今回の「運用2号機」は最初の試験飛行で使った機体だ。起業家のイーロン・マスク氏が設立したスペースXはロケットの一部も再利用する。民間主導で低コストの輸送技術を確立した。
星出さんの宇宙飛行は3回目。ISSでは長期滞在中の野口聡一さんと対面する。日本人飛行士2人が同時に宇宙に滞在するのは11年ぶりとなる。
スペースXは21年中にもクルードラゴンを使って民間人のみの宇宙飛行を計画する。企業が運用する宇宙船を再利用しつつ、安全性も確保できれば、有人宇宙飛行の新たな市場が広がる。
米国は11年のスペースシャトル退役以来、宇宙飛行士の輸送をロシアに頼った。自前の輸送手段を再び確保し、さらに月面の有人探査も狙う。バイデン政権は企業の技術力やノウハウを活用し、有人宇宙開発を巡る中国との競争を優位に進めたい考えだ。
【日本經濟新聞 2021年4月23日 19:07 (2021年4月24日 5:12更新)】
檜扇を詠める歌20
巻15-3712:ぬばたまの妹が干すべくあらなくに我が衣手を濡れていかにせむ
巻15-3721:ぬばたまの夜明かしも船は漕ぎ行かな御津の浜松待ち恋ひぬらむ
巻15-3732:あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらに音のみし泣かゆ
◎738年前後、朝廷の官人である作者は新婚早々勅勘の身となり越前に配流されます。罪の理由は女官との禁断の恋、重婚、政治的策略説などあり、はっきりしません。恋の相手は狭野芽上娘子(さの ちがみのおとめ)。
二人がやり取りした恋歌は宅守40首、娘子は23首という膨大なものです。
約1年8か月ばかりを経て赦され、昇進して都に栄転したところを見ると、
はやり政治的事件に巻き込まれた失脚かと思われます。
※中臣宅守(なかとみ の やかもり、生没年不明)
奈良時代の貴族・歌人。刑部卿・中臣東人の子。官位は従五位下・神祇大副。
天平12年(740年)頃に蔵部の女孺であった狭野弟上娘子を娶ったときに越前国に流罪となります。罪に問われた事情は明らかでなく、政変がらみとするものと禁を犯して娘子と結ばれたものとの両説があります。同年6月に大赦が行われますが、罪は赦されませんでした。天平13年(741年)9月に再度行われた大赦により帰京したものでしょうか。
天平宝字7年(763年)従六位上から三階昇進して従五位下に叙爵するも、天平宝字8年(764年)藤原仲麻呂の乱に連座して除名されました。
越前国配流時に狭野茅上娘子と交わした和歌を中心に40首が『万葉集』に採録されています。
巻15-3738:思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
巻15-3769:ぬばたまの夜見し君を明くる朝逢はずまにして今ぞ悔しき
檜扇を詠める歌19
巻15-3598:ぬばたまの夜は明けぬらし玉の浦にあさりする鶴鳴き渡るなり
◎遣新羅使
日本古代の朝廷が新羅に派遣した使節です。《日本書紀》によると欽明天皇の時代より新羅との間で任那(みまな)問題をめぐる交渉があり、日本側の使節は新羅系渡来人の吉士(きし)氏が多く任命されました。663年の白村江(はくそんこう)の戦で新羅が百済(くだら)を滅ぼしたため一時期断交しました。668年新羅の朝貢により国交回復しましたが720年頃から関係が悪化し、779年両国使節の交流は終わりました。国交回復後の使節は大使・少使・大位(だいじょう)・少位・大史(だいさかん)・少史各1人でした。
巻15-3647:我妹子がいかに思へかぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆ
巻15-3651:ぬばたまの夜渡る月は早も出でぬかも海原の八十島の上ゆ妹があたり見む
巻15-3671:ぬばたまの夜渡る月にあらませば家なる妹に逢ひて来ましを
ウェブニュースより
ミャンマー、拘束の邦人記者を訴追 国営テレビ報道 ―― ミャンマー国営テレビは19日夜、18日に治安当局に拘束されたフリージャーナリストの北角裕樹さん(45)が虚偽ニュースを拡散した疑いで逮捕、訴追されたと報じた。国軍のクーデターに抗議するデモが長期化し、軍は報道関係者への弾圧を強めている。
北角さんはミャンマー在住で、元日本経済新聞記者。現地の日本語情報誌の編集長を経てフリーで活動していた。SNS(交流サイト)などで抗議デモに関する情報を発信し、国軍にとって不利な情報が「虚偽」と認定された可能性がある。
国軍は2月のクーデター後に刑法を改正。虚偽のニュースを流したり、社会不安をあおったりしたとして有罪になると、最長3年の禁錮刑が科される。在ミャンマー日本大使館は北角さんへの面会と解放を求めている。
北角さんは4月18日夜に最大都市ヤンゴン市内の自宅で身柄を拘束された。市内の刑務所に移送され、取り調べを受けている。2月26日にもデモを取材中に拘束されたが、その日のうちに解放されていた。 【日本經濟新聞 2021年4月20日 9:53】
檜扇を詠める歌18
巻13‐3312: 隠口の泊瀬小国によばひせす我が天皇よ.......(長歌)
原文:隠口乃 長谷小國 夜延為 吾天皇寸与 奥床仁 母者睡有 外床丹 父者寐有 起立者 母可知 出行者 父可知 野干王之 夜者昶去奴 幾許雲 不念如 隠麗香聞
万葉集 巻13‐3312
作者:不明
よみ:隠口の 泊瀬小国に よばひせす 我が天皇よ 奥床に 母は寐ねたり 外床に 父は寐ねたり 起き立たば 母知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明けゆきぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠り妻かも
意訳:この泊瀬小国に妻にしたいとやっていらっしゃったわが君よ。奥の寝床には母が寝ていて、入口近くの寝床には父が寝ています。起き立てば母が気づくでしょうし、部屋から出て行けば父が気づくでしょう。ああ、こんなにも思うにまかせぬ私は隠し妻の身
左注:右四首
注訓:右四首
◎「よばひ」は「夜這い」すなわち「夜、恋人のもとへ忍んで行く」あるいは「寝とりたい相手の寝所へ忍び入る」という良からぬ連想をさせる言葉として用いられています。
しかしながら、その原義は「相手を呼び続ける」という意の「呼ばふ」が「呼ばひ」に変化したものです。
万葉仮名では「よばひ」に「結婚」という字が当てられている例があり、「呼び続ける」意の中に「求婚する」という気持が含まれていることが窺われます。
巻13‐3313:川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は常にあらぬかも
巻13‐3329:白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の .......(長歌)
原文:白雲之 棚曳國之 青雲之 向伏國乃 天雲 下有人者 妾耳鴨 君尓戀濫 吾耳鴨 夫君尓戀礼薄 天地 満言 戀鴨 胸之病有 念鴨 意之痛 妾戀叙 日尓異尓益 何時橋物 不戀時等者 不有友 是九月乎 吾背子之 偲丹為与得 千世尓物 偲渡登 万代尓 語都我部等 始而之 此九月之 過莫呼 伊多母為便無見 荒玉之 月乃易者 将為須部乃 田度伎乎不知 石根之 許凝敷道之 石床之 根延門尓 朝庭 出座而嘆 夕庭 入座戀乍 烏玉之 黒髪敷而 人寐 味寐者不宿尓 大船之 行良行良尓 思乍 吾寐夜等者 數物不敢鳴
万葉集 巻13‐3329
作者:不明
よみ:白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の 天雲の 下なる人は 我のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言を満てて 恋ふれかも 胸の病みたる 思へかも 心の痛き 我が恋ぞ 日に異にまさる いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月を 我が背子が 偲ひにせよと 千代にも 偲ひわたれと 万代に 語り継がへと 始めてし この九月の 過ぎまくを いたもすべなみ あらたまの 月の変れば 為むすべの たどきを知らに 岩が根の こごしき道の 岩床の 根延へる門に 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らは 数みもあへぬかも
意訳:白雲のたなびくこの国、青雲の向こうの下に伏す国の、この広大な天雲の下にいる人々の中で私のみであろうか、あなたを恋慕うのは。さらに私のみであろうか、あなたを恋い慕って言葉を尽くしても尽くしきれないほど天に満ち満ちたる言葉を吐くのは。それほどまでに恋い慕うので胸が病み、あなたのことを思うと心が痛みます。私の恋い慕う思いは日に日に増すばかりです。いつといって恋わない時はありませんが、特にこの九月は恋しさがつのります。この九月が来ると「私を偲んでおくれ、いついつまでも忘れないで偲んでおくれ」とあの人に言われているようで、さらにはこの九月を万代(よろづよ)まで語り継いでいこうと大切にし始めた。この九月が過ぎるとどうしようもありません。月がかわってしまうと(あなたに向き合う)機会がなくなり、為すすべのとっかかりも分からず、岩でごつごつした道を、どっしりした岩床のような門口なのに、朝には門を出て嘆き、夕方には門に入って思い嘆く。白栲の着物の袖を折り返しひとり床につく。折り返した袖に黒髪を敷いて人様のように共寝をすることもなく、ゆらゆら揺れる大船のようにああでもないこうでもないと思いつつ我が寝る夜は数え切れない。
左注:右一首
注訓:右一首
ウェブニュースより
「強い女王」心痛大きく 職務全面再開への影響懸念―英 ―― フィリップ英殿下の葬儀が17日行われ、エリザベス女王(94)は最愛の夫に別れを告げた。喪が明ける23日以降、女王は職務を全面的に再開する意向とされるが、公私における大きな支えを失った心痛は大きい。職務への影響を心配する声もある。
「(女王は)驚くほど毅然(きぜん)とした人」。次男のアンドルー王子は先週、記者団にそう述べた。葬儀式典の準備では女王自身が采配を振るった。「困難にたじろがない強い女王」との評価は、多くの人に共有されている。
とはいえ、74年近く連れ添ったパートナーを亡くしたことの心理的影響も指摘される。高齢者支援を行う慈善団体の幹部は英紙に、女王が大きな試練に直面する恐れがあるとの見方を示した。
エリザベス女王の高祖母ビクトリア女王(在位1837~1901年)は夫アルバート公が42歳の若さで死去した後、職務から遠ざかり、2年間は公の場に姿を見せなかった。
エリザベス女王の職務は可決された法案を裁可したり、政府からの報告文書を読んだりするほか、要人との面会など多岐にわたる。5月11日には議会の開会式に臨み、施政方針演説を行う。
女王は21日、95歳の誕生日を迎える。身体への負担も気掛かりだ。タイムズ紙は「女王は今後数週間から数カ月の間、近しい友人や家族、聖職者の精神的な支援を得ることができるだろう」と勇気づけた。 【JIJI.COM 2021年04月19日07時01分】
檜扇を詠める歌17
巻13‐3297: 玉たすき懸けぬ時なく我が思ふ.......(長歌)
原文:玉田次 不懸時無 吾念 妹西不會波 赤根刺 日者之弥良尓 烏玉之 夜者酢辛二 眠不睡尓 妹戀丹 生流為便無
万葉集 巻13‐3297
作者:不明
よみ:玉たすき 懸けぬ時なく 我が思ふ 妹にし逢はねば あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに 寐も寝ずに 妹に恋ふるに 生けるすべなし
意訳: 玉たすきを掛けるではないが、気に懸け続けている彼女に逢えないので、終日終夜寝るに寝られず、彼女を恋い焦がれているので生きた心地がしない。
左注:右二首
注訓:右二首
巻13‐3303: 里人の我れに告ぐらく汝が恋ふる.......(長歌)
原文:里人之 吾丹告樂 <汝>戀 愛妻者 黄葉之 散乱有 神名火之 此山邊柄 [或本云 彼山邊] 烏玉之 黒馬尓乗而 河瀬乎 七湍渡而 裏觸而 妻者會登 人曽告鶴
万葉集 巻13-3303
作者:不明
よみ:里人の 我れに告ぐらく 汝が恋ふる うつくし夫は 黄葉の 散り乱ひたる 神なびの この山辺から [或本云 その山辺] ぬばたまの 黒馬に乗りて 川の瀬を 七瀬渡りて うらぶれて 夫は逢ひきと 人ぞ告げつる
意訳:里人が私に告げて言うには、あなたが恋うる愛しい人は、黄葉が散り乱れる、神のいらっしゃる山辺から(或本にいう、その山辺)から真っ黒な黒馬に乗って、(曲がりくねった)川の瀬を幾度も渡り、疲れ果ててあなたに逢いにきましたよと、その人は私にいいました。
左注:右二首
注訓:右二首
ウェブニュースより
ミャンマー国軍総司令官のASEAN会議出席、市民が反発 ―― 東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議にミャンマーのミン・アウン・フライン国軍総司令官が出席する見通しとなったことを巡り、ミャンマーの市民が反発を強めている。ミン・アウン・フライン氏が出席すれば、「政府トップ」として事実上認める形になりかねないことが要因だ。
タイ外務省の報道官によると、ASEAN首脳会議は24日、インドネシアの首都ジャカルタで対面形式で開かれる。ミン・アウン・フライン氏が出席する意向を示しているといい、実際に出席すれば、同氏が外国首脳と対面で会談するのは初となる。
17日にこのニュースが報じられると、SNS(交流サイト)では、市民側から「(国軍が設置した)国家統治評議会には正統性がない」「ミャンマー国民の声を無視している」とASEANを非難する声が即座に起きた。
16日には国軍に拘束された民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏を支持する「連邦議会代表委員会(CRPH)」が「挙国一致内閣」の発足を宣言したばかり。多くの人々は、国際社会がCRPHの政府を承認し、正式な対話の相手として受け入れることを求めている。
ヤンゴンに住む50歳代男性は日本経済新聞の電話取材に「ASEANは国軍による統治を認めるつもりなのか。ミャンマーの人々はみな(ミン・アウン・フライン氏の首脳会議出席に)反対している」と語った。民間団体の政治犯支援協会によると、クーデター後の治安部隊の発砲などによる死亡者は、17日までに730人に達した。 【日本經濟新聞 2021年4月18日 19:42】
檜扇を詠める歌16
巻13‐3280: 我が背子は待てど来まさず天の原.......(長歌)
原文:妄背兒者 雖待来不益 天原 振左氣見者 黒玉之 夜毛深去来 左夜深而 荒風乃吹者 立留 待吾袖尓 零雪者 凍渡奴 今更 公来座哉 左奈葛 後毛相得 名草武類 心乎持而 三袖持 床打拂 卯管庭 君尓波不相 夢谷 相跡所見社 天之足夜千
万葉集 巻13‐3280
作者:不明
よみ:吾(あ)が背子は 待てど来まさず 天の原 振り放け見れば ぬばたまの 夜も更(ふ)けにけり さ夜更けて 嵐の吹けば 立ち待てる 吾が衣手に 降る雪は 凍(こほ)りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛(かづら) 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて 御袖もち 床うち掃ふ 現(うつつ)には 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足(たる)夜(よ)を
意訳:あの人は待っても待っても来てくださらない。大空を振り仰ぐと夜も更けてきた。次第に更けて嵐も吹いてきた。外に出て立って待っている私の着物の袖に降る雪も凍てついてきた。今となってはもうあの人は来て下さらないだろう。さな葛のつるのように長く伸びて後には逢えるだろうと自分の心を落ち着かせ、両袖をもって床を打ち払った。でも、現実にはあの方には逢えないでしょう。せめて夢の中に出てきて逢って下さい。満ち足りた夜にするために。
巻13‐3281: 我が背子は待てど来まさず雁が音も.......(長歌)
題詞:或本歌曰
題訓:或る本の歌に曰く
原文:吾背子者 待跡不来 鴈音<文> 動而寒 烏玉乃 宵文深去来 左夜深跡 阿下乃吹者 立待尓 吾衣袖尓 置霜<文> 氷丹左叡渡 落雪母 凍渡奴 今更 君来目八 左奈葛 後<文>将會常 大舟乃 思憑迹 現庭 君者不相 夢谷 相所見欲 天之足夜尓
万葉集 巻13‐3281
作者:不明
よみ:我が背子は 待てど来まさず 雁が音も 響(とよ)みて寒し ぬばたまの 夜も更けにけり さ夜更くと あらしの更けば 立ち待つに 我が衣手に 置く霜も 氷にさえわたり 降る雪も 凍りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼めど うつつには 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足り夜に
意訳:あの人は待っても待っても来てくださらない。雁の鳴き声が響いてきて寒い。夜も更けてきた。次第に更けて嵐も吹いてきた。外に出て立って待っている私の着物の袖に置く霜も氷つき、降る雪も凍てついてきた。今となってはもうあの人は来て下さらないだろう。さな葛のつるのように長く伸びて後には逢えるだろうと大船に乗った気持で自分の心を落ち着かせた。現実にはあの方には逢えないでしょう。せめて夢の中に出てきて逢って下さい。満ち足りた夜にするために。
左注:右四首
注訓:右四首
ウェブニュースより
米が問う日本の覚悟 共同声明、52年ぶり「台湾」明記 ―― バイデン米大統領は就任後初めて対面で会う首脳に菅義偉首相を選んだ。米中対立のさなか、日本はどこまで米国とともに歩む意志があるのか。首脳会談は具体的なテーマをいくつも挙げ、日本に覚悟を迫るものとなった。日米共同声明での52年ぶりの台湾問題への言及がそれを象徴する。
バイデン氏は16日午後(日本時間17日午前)、ホワイトハウスのローズガーデンで開いた共同記者会見で「我々は中国からの挑戦にともに対応し、21世紀も民主主義国が競争に勝つことを証明する」と訴えた。日本と歩調を合わせて中国に対峙していく姿勢を強調した。
トランプ前大統領が対中批判の先頭に立っていた時代なら、日本はトランプ氏を盾に追従し、中国との正面衝突も避けられた。バイデン氏の期待は日本の並走にある。
「同盟の羅針盤」と位置づけた共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と記したのは日本にとって一種の踏み絵。「台湾海峡」を記すのは日中国交正常化前の1969年以来となる。
日本政府内には3月の日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同発表で明記しており、今回は踏み込む必要はないとの意見もあった。それでも米側は最後まで首脳声明でも触れるよう求めた。
共同声明では日米同盟に関し、米国が核を含むあらゆる手段で日本を防衛することや、沖縄県・尖閣諸島が米軍の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると明記。米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設などにも触れ、日米双方の関心事項を網羅した。
有事に持ちうる選択肢を改めて列挙し「日本は自らの防衛力を強化することを決意した」とも盛り込んだ。台湾問題を機にバイデン政権が同盟強化だけでなく、日本に自立した防衛力などより重い責任を望んでいる証左ととれる。
尖閣防衛や拉致問題への言及は日本の要望通りとした。米国本土から遠く離れた極東での対応に日本の協力は不可欠。同盟国の日本に最悪のシナリオへの備えと覚悟を求めた内容といえる。
「日本に中国と相対するつもりがあるのか」。米ニューヨーク・タイムズ紙の会談前の指摘は、もはや米中両にらみといった曖昧さを許さないとの米側の切迫感を映す。
半導体の供給を台湾に頼る米国にとって、台湾問題は産業政策にも直結する。台湾が米国のサプライチェーン(供給網)の急所だとの認識が強まるほど、台湾に圧力をかける中国への脅威論も高まる。
米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月の上院公聴会で「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言した。
危機感を裏打ちするように、日米は半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の拠点を米アリゾナと茨城県つくば市にそれぞれ誘致し、生産・開発拠点を分散させた。
バイデン氏は記者会見で人工知能(AI)や量子コンピューターなどにも言及し「先端技術が専制主義でなく民主主義の基準で管理されるようにする」と主張した。伝統的な安保の領域にとどまらず、経済全般にわたって中国と向き合う姿勢を示した。
脱炭素を巡る取り組みはその典型だ。産業構造の転換と裏表の関係にあるにもかかわらず、米国は欠かせない機器や資材を中国に依存する。
トランプ前政権が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱。4年間の空白で米国の対応は遅れた。
その間に欧州連合(EU)が先行した。2030年までの温暖化ガス排出削減の目標を1990年比55%減と世界で突出する水準を掲げ、ルールづくりをけん引した。対応を急ぐ民間から洋上風力などで有力企業が多く育った。
中国も追い上げる。電気自動車(EV)用電池は中国企業が世界首位で4分の1のシェアを握る。EVのモーターに使うレアアース(希土類)も中国に偏在する。技術と資源を押さえられ、市場まで奪われかねないとの懸念が米国にある。
バイデン氏は就任早々に署名した大統領令で、気候変動を外交・安保政策の中心に据えると宣言した。巻き返しのパートナーとして白羽の矢を立てたのが、同盟国で技術の蓄積がある日本だった。
日本は脱炭素時代の「夢の燃料」と期待される水素技術の開発で先行する。両首脳が今回結んだパートナーシップでもクリーンエネルギーに関する技術協力を盛った。バイデン政権は日本に30年の削減目標を早く示すよう要求。首相も会談で、22日から米が主催する気候変動サミットまでに示すと約束した。
台湾問題への言及などで日中関係は一線を越えるおそれはある。台湾から170キロほどの尖閣諸島の周辺では連日、中国海警局の船が押し寄せる。首相は会談後、記者団に「中国に言うべきことははっきり言っていく」と明言した。
互いの本気度を探りあった会談はおよそ2時間半。20分間は通訳を交えた一対一だった。出されたハンバーガーにも手をつけず、話し合いに「熱中した」と首相は明かした。 【日本經濟新聞 2021年4月18日 2:00】
sechin@nethome.ne.jp です。
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