瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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  西洋では継子立てと同じようなやり方が実際に行われていたという。古代ローマでdecimatio〔デシメイティオ、10分の1刑〕と呼ばれる慣習がそれである。これは軍隊においてひとつの隊が規律違反などの罪に問われた時、隊員を円形に並べて10番目、10番目に当たるものを何人か選び出して、その者たちを処罰してあとの者は許すというものである。
 継子立てに相当するものを西洋では「Josephus(ヨセフス)の問題」と呼んでいるが、これは370年ごろにHegesippus(ヘゲシッパス)の筆名で書かれた次の物語に由来している。
 ユダヤ人はローマに反抗して独立戦争を起こしたときのこと、ユダヤ側の総司令官Josephus(ヨセフス)はGalilee(ガリラヤ)の町Jotapata(ヨタパタ)がローマ人に包囲されて籠城したが、ローマ軍に包囲され46日で陥落した。Josephus(ヨセフス)は同国人40人とともに穴に隠れたが、Josephusと彼の友人は何とかして生き延びたいと思っていた。しかし、他の同志たちは捕虜になるよりも集団自決を図ろうと決意していたので反対することも出来なかった。いざ自決というときになって、Josephusは一計を案じ、全員を円形に並べ、3番目、3番目…に当たるものを選び出して、順に他の同志に殺してもらい、最後の1人は自殺をするという方法を提案した。これが承認されたので得たりとばかり、Josephusと友人は16番目と31番目に位置して、最後まで残ることに成功して、九死に一生をえたという。
 この話はJosephusの表わした『ユダヤ戦記』に出てくるので、継子立ての件〔実際は籤引きであったらしい〕以外はほぼ史実通りであるという。西暦67年ユダヤ独立戦争の折、総司令官であったJosephusは、Jotapata(ヨタパタ)の戦いに敗れ、以上のような経過の後、友人とともにローマ軍に投降する。そしてローマ軍の客分の待遇を受けながら、自国ユダヤの滅亡を見ることになるのである。
bdbc5b4f.jpeg※Flavius Josephus〔フラウィウス・ヨセフス、37~100年頃):帝政ローマ期の政治家及び著述家。66年に勃発したユダヤ戦争で当初ユダヤ軍の指揮官として戦ったがローマ軍に投降し、Titus〔ティトゥス、39~81年、エルサレム攻略の司令官〕の幕僚としてエルサレム陥落にいたる一部始終を目撃。後にこの顛末を記した『ユダヤ戦記』を著した。
 このヨセフスの問題で最も有名なのは「トルコ人とキリスト教徒の問題」である。これは非常に古い問題で、1848年にN、Chuquet(シューケー)という人の著したフランスの本にあり、11世紀や10世紀の写本の中にもあるといわれる。

d848569e.jpeg キリスト教徒15人、トルコ人〔異教徒〕15人が同船した船が暴風雨にあって難破し、15人を海に投じなければ沈没は免れない事態になった。そこで船長は全員を円形に並べ、9番目、9番目…に当たるものを順次海に投じることにした。この時、船長は左図のように並べた。白丸がキリスト教徒、黒丸がトルコ人を表わしている。この船長の策略によって、キリスト教徒は全員救われたのである。
 この配置を覚えるための覚え歌が、ラテン語、英語、ドイツ語、フランス語などで作られているそうである。
日本語でも「沿道に 咲く花散りぬ 秋彼岸」という、俳句風のものが作られているらしい。これらをローマ字書きして、母音だけを取り出して、a=1、i=2、u=3、e=4、o=5とすれば、出発点から、時計回りの配置が再現されるのである。
  Endo n saku hana chirinu  aki higan
   
白(キリスト教徒)、黒(トルコ人)を eoiauaaiiuaiia=45213112231221 と交互に並べていけばよいのである。
 
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