橡(つるばみ)を詠んだ歌2
巻18-4109: 紅はうつろふものぞ橡のなれにし来ぬになほしかめやも
この歌は4106番(長歌)にある反歌3首の1つです。次に長歌の題詞と標題を付記します。
題詞:教喩史生尾張少咋謌一首并短謌
題訓:史生(ししやう)尾張(をはりの)少咋(をくび)に教へ喩(さと)せる謌一首并せて短謌
※尾張少咋(おわりの おくい、生没年不詳)
奈良時代の官吏。越中(富山県)の史生(書記官)でした。「万葉集」巻18にみえる越中守(えっちゅうのかみ)大伴家持の歌によれば、天平感宝(てんぴょうかんぽう)元 (749) 年少咋が遊女にまよい、奈良に残した妻をかえりみないことを家持に諭されました。
標題:七出例云、但犯一條、即合出之。無七出輙奇者、徒一年半。三不去云、雖犯七出不合奇之。違者杖一百。唯、犯奸悪疾得奇之。兩妻例云、有妻更娶者、徒一年。女家杖一百離之。詔書云、愍賜義夫節婦。謹案、先件數條、建法之基、化道之源也。然則義夫之道、情存無別、一家同財。豈有忘舊愛新之志哉。所以綴作數行之謌、令悔奇舊之惑。其詞云
標訓:七出(しちしゆつ)の例に云はく「ただし、一條を犯さば、即ち合ひ出(いだ)すべし。七出無くして輙(たやす)く奇(あや)しとするは、徒(づ)一年半なり」といへる。三不去(さんふきょ)に云はく「なお、七出を犯すとも之を合ひ奇しとせず。違へる者は杖一百なり。ただ、奸(かん)を犯せると悪疾(あくしつ)とは之を奇(あや)しと得(う)る」といふ。兩妻の例に云はく「妻有りて更に娶(めと)る者、徒一年なり。女家は杖一百にして之を離て」といふ。詔書(しょうしょ)に云はく「義夫と節婦を愍(あはれ)み賜(たま)へる」といふ。謹(つつし)みて案(あん)ずるに、先の件(くだり)の數條は、法を建つは之の基にして、道に化(おもむ)くは之の源なり。然らば則ち義夫の道は、情(こころ)の別(べち)なきことに存り、一家は財を同じくす。豈、舊(ふる)きを忘れ新しきを愛(め)づる志(こころ)有らめや。所以(ゆゑ)に數行の謌を綴(つづ)り作(な)し、舊きを奇(あや)しとの惑(まどひ)を悔(く)いしむ。其の詞(ことば)に云はく、
標訳:七出の例に云うには「ただし、七出の一条を犯せば、離縁出来る。七出が無いのに安易に疑い訴える者は、徒刑一年半」である。三不去に云うには「七出の条を犯しても、これを疑いとはしない。疑惑を間違えたものは杖刑一百なり。ただし、姦通を犯したものと悪質の疾病は、これを七出の疑いと出来る」と云う。両妻の例に云うには「妻が有って、更に娶る者は、徒刑一年なり。女は杖刑一百を執行して離縁させろ」と。詔書に云うには「義夫と節婦には朝廷は褒賞をお与えになる」と。謹んで考えてみると、先に示す数カ条は、法を執行するのは義夫と節婦との規範を基にし、道徳を行うのは義夫と節婦との規範を源とする。もし、そうであるならば、義夫の道徳は、人を愛しむ心を人により別たないことにあり、一家の財の恩恵を皆が共々に共有することである。それならば、どうして古きを忘れ、新しいのを愛する心持があるだろうか。そこで、数行の歌を綴って作り、古きに疑いがあるとの迷える気持ちを悔い改めされる。その詞に云うには、
sechin@nethome.ne.jp です。
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