瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
ここからは当てずっぽうに路地を通って、水戸街道に出ると、そこは鳩の街の入口であった。雨が落ちてきたようなので、桜橋通りに出ると、桜橋を渡って帰宅した。
彼岸花を眺めているとつくづく摩訶不思議な形をしているなあと思う。造りは、天界の花「曼殊沙華」にふさわしくこの世の花とは思えないほどに巧妙で、全体として計算ずくめの造形美を感じさせる。数個の花のそれぞれは、六枚の花弁と雄蕊、長く伸びた雌蕊を持ち、花弁は外側に弧を描いて反り返っている。集まって空間に浮かぶ球体は、宇宙的な広がりを連想させるのである。仏教で、彼岸とは遙か彼方のことを意味するが、古人はよくぞこの花を「彼岸花」と名付けたものだ。
曼殊沙華とは天界に咲くとされる想像上の花で、色は白く鮮やかで、諸天はこれを自在に雨〔ふら)らせ、見る者を強剛の三悪業から離れさせるとされるが、この世の彼岸花は真紅の花ではあるがこれを「曼殊沙華」と呼んだのも成程とうなづけるのである。
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目高 拙痴无
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