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小町算1
 「いろは歌」は、弘法大師が仏教の経典(涅槃経)の「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅爲楽」の意を今様歌にしたと伝えられているもので、旧仮名遣いの48文字のうち“ん”を除く47文字が1回だけ出てくる歌として知られている(現代仮名遣いでは使われていない“ゐ”と“ゑ”も含まれる)。
a03b8602.jpeg この「いろは歌」と同じようにかな文字を総て1回だけ含む歌を作る試みは、江戸時代に多くの学者によってなされたという。有名な国学者 本居宣長も「雨降歌」を作っている。明治時代に『萬朝報』という新聞がこのような歌を募集したところ、佳作が沢山集まり、その中から坂本百次郎という人の『鳥啼歌』が、1等に選ばれた。昭和に入ってからのものでは、当時の吉田首相を風刺した歌が作られている。
 英語などのアルファベットを1回だけ使った26文字の文では、特異な語や固有名詞を含まないものは作られていないようで、
 Cwm     fjord     bank   glyphs     vext       quiz.
(円形の谷)(フィヨルド)(斜面)(浮彫りの増)(いらいらさせる)(風変わりなひと)
というのが、26文字の英文としては最も整っているもののようである。アルファベット26文字を総て含む短文をpangram(パングラム)というそうだが、そのなかには
The quick brown fox jumps over the lazy dog.(すばしっこい茶色の狐がのろまな犬を跳び越える。) のような傑作があり、タイプライターやコンピュータのキーボードの試験などによく用いられているという。quick brown fox(クイック・ブラウン・フォックス)と略して呼称されている。
 こうした言葉遊びと似たものは、数字パズルにも多く見られる。つまり、0~9または1~9の数字を1回ずつ使って、ある数を表わしたり、あるいは等式を作ったりする問題である。このように1から9までの数を1つずつ使って特定の数を表わしたり、関係式を作ったりすることを日本では「小町算」と呼んでいる。また、1から9までの数各1個で構成された数を小町数と言い、その小町数を得るための計算を小町算と呼ぶ場合もある。
935cbb5b.jpeg 中根彦循(1701~1761年)が寛保3(1743)年に刊行した『勘者御伽双紙』に小町算が載っている。この名前は謡曲の『卒塔婆小町』の中に、深草の少将か小野小町の下へ九十九夜通い詰めた話のあるのに因んだもので、一から十までで99を表わすものだが長歌の形で出ている。小野小町に取り憑いた四位の少将の霊が「一夜二夜や三夜四夜(五六はあらで)七夜八夜九夜十夜と」99夜小町の元に通った事を歌う。歌通り5、6を除くと 1+2+3+4+7+8×9+10=99 である。もう一つのやり方としては
 一二三四五六七八九十 の中央から対称の位置にある数同士を掛け合わせたものを合計し、これから中央の五と六を引くと、
 1×10+2×9+3×8+4×7+5×6=110
 110-5-6=99 となるのである。
 なお、小町算は『勘者御伽双紙』より100年前の元禄11(1698)年に書かれたといわれる田中由真〔たなかよしざね、1651~1719年、江戸中期の和算家。京都の人。〕の『雑集求笑算法』(写本)の中にも見られ、非常に古くからあることが判る。
※中根彦循(なかねげんじゅん):1701-1761年、江戸時代中期の和算家。元禄(げんろく)14年生まれ。中根元圭(げんけい)の子。京都の人。江戸で建部賢弘(たけべ-かたひろ)、久留島義太(よしひろ)にまなぶ。のち京都にかえり算学をおしえた。高次方程式の近似解法を案出している。宝暦11年8月21日死去。61歳。名は卞。通称は保(安)之丞。号は法舳。著作に「開方盈肭術(かいほうえいじくじゆつ)」「竿頭(かんとう)算法」など。
※謡曲『卒塔婆小町』〔終わりの部分を転写〕:シテ 小野小町《おののこまち》(面・老女《ろうじょ》) ワキ 高野山の僧 ワキヅレ 従僧二人
9329986a.jpeg シテ「いや小町といふ人は。あまりに色が深うて。あなたの玉章こなたの文。かきくれて降る五月雨の。空言
なりとも。一度の返事もなうて。いま百年になるが報うて。あら人恋しやあら人恋しや。
 ワキ「人恋しいとは。さておことには如何なる者のつきそひてあるぞ。
 シテ「小町に心を懸けし人は多き中にも。殊に思深草の四位の少将の。
地「恨の数のめぐり来て車の榻に通はん。日は何時ぞ夕暮。月こそ友よ通路の。関守はありとも留まるまじや出で立たん。
 シテ「浄衣の袴かいとつて。地「浄衣の袴かいとつて。立烏帽子を風折り狩衣の袖をうちかづいて。人目忍ぶの通路の。月にも行く暗にも行く。雨の夜も風の夜も。木の葉の時雨雪深し。
 シテ「軒の玉水。とくとくと。
地「行きては帰り。かへりては行き一夜二夜三夜四夜。七夜八夜九夜。豊の明の節会にも。逢はでぞ通ふ鶏の。時をもかへず暁の。榻のはしがき百夜までと通ひいて。九十九夜になりたり。
 
 この小町算については以前も触れたことがあるように思ったので、調べてみたら2010/10/19 (火)のブログでも取り上げていた。
http://sechin.blog.shinobi.jp/Entry/697/
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