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東京の京橋には今でも親柱が残っており、そこには「きやうはし」と刻まれています。「今日」の歴史的仮名づかいは「けふ」なのに、なぜ「京」は、「きやう」なのでしょう?



 現代仮名づかいの「きょう」は、歴史的仮名づかいでは「きよう」「きやう」「けう」「けふ」と4通りに表記する場合があり、それぞれの例として共通(きようつう)、兄弟(きやうだい)、教育(けういく)、今日(けふ)などがあるといいますが、どういう風に使い分けるのでしょうか?
 
「きよう」「きやう」「けう」「けふ」 これらは現代ではもちろん全て「きょう /kjo:/」と同じ発音をされますし、古典作品を読むときも全て同じように読みます。
 
初めから同じ音に複数のつづりを用意するのは考えてみればおかしなことです。実は歴史的仮名遣いは昔は書いてある通りに発音していたのです。「きよう」「きやう」「けう」「けふ」は全く別の音をその通りに書いているだけで「使い分ける」ようなものではなかったのです。
 
しかし言語というものは時間がたつと発音が変わってゆくのが普通です。その一方文字の方はそれに比べると改定されるのが遅れるのがまた普通です。書いたものはいつまでも残り、また話し言葉は書き言葉よりも常に先を行くものです。こうなると単に昔からの習慣として同じ発音に違う文字を使い続けることになります。
 
このように文字と発音に乖離が生じるのは決して珍しいことではなく、代表的なのは英語(例えばknight)です。日本語はつづりを改定し発音と文字を完全ではないにしろ近づけましたが英語はいまだに「歴史的仮名遣い」をしているのです。
 
なお、漢字の音読みの場合、伝わってきた当時の音を限られた種類の仮名でできるだけ忠実に表そうとしたのが歴史的仮名遣いに現れていると言われます。
 
「京(きゃう)」-現代中国音 jing:朝鮮音 kyeong
 
「協(けふ)」-現代中国音 xie:朝鮮音 kep
 
昔の中国や朝鮮の発音は正確には分かりませんが、日本音(旧仮名遣い)と中国音、朝鮮音の間にはほぼ正確な対応が見られます。「~ふ」となる場合は中国では末尾の子音なし、朝鮮では p で終わる、「~う」は ng に対応するなどのようにです。
 
「今日」と書いてもキョウと読みます。これを旧仮名遣いではケフと書きます。その発音の移り変わりは次の通りです。まずケフは古くはkeFeと発音されましたが、そのFが弱くなってwになり、さらに消失してkeuと発音されるように変わり、ついで keukeôkiôkyô というように変化してきて、今日のキョウにいたったものです。ところが、発音の変化は、同じ条件の場合には例外なく一斉におこるので、古語の蝶(テフ)がチョウになったのも、ケフ→キョウと全く同じ経過をたどっているのです。
 
 
つまり、蝶(てふ)は元々中国語の発音を仮名で写したもので、teFu と発音されていました。それがテウと発音されるようになり、teuteôtiôtyô という変化を経ました。その結果、蝶々がチョウチョウとなったのです。


 


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