瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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2fc80201.jpeg 上田秋成(1734~1809年)作「雨月物語」にある「菊花の約(ちぎり)」は全体を中国明代馮夢龍〔ふうむりゅう、1574~1646年〕の白話小説の『古今小説』「范巨卿鷄黍(けいしょ)死生交」をかなり忠実に翻案したもので、冒頭「青々たる春の柳。家園に種ることなかれ。交りは輕薄の人と結ぶことなかれ。楊柳茂りやすくとも。秋の初風の吹に耐めや。輕薄の人は交りやすくして亦速なり。楊柳いくたび春に染れども。輕薄の人は絶て訪ふ日なし。」ではじまり、「咨輕薄の人と交はりは結ぶべからずとなん」で終る、友人間の信義について述べた名文で綴られた読本(よみほん)の代表作である。
 范巨卿については、六朝時代の怪奇小説「捜神記」、もっと古くは後漢書「獨行列伝」にある。
 
 過故人莊  孟浩然
故人具鷄黍 故人(こじん)鷄黍(けいしょ)を具(そろ)え
邀我至田家 我(われ)を邀(むか)えて田家(でんか)に至(いた)らしむ
綠樹村邊合 綠樹(みどりき)村邊(そんぺん)に合(あわ)し
青山郭外斜 青山(ちんさん郭外(かくがい)に斜(なな)めなり
開筵面場圃 軒(けん)を開(ひら)きて場圃(じょうほ)に面(めん)し
把酒話桑麻 酒(さけ)を把(と)りて桑麻(そうま)を話(はな)す
待到重陽日 重陽(ちょうよう)の日(ひ)を待(ま)ち到(いた)り
還來就菊花 還(ま)た來(きた)りて菊花(きくか)に就(つ)かん
c4c096a0.jpeg〔訳〕《旧友の荘園を訪れて》
昔なじみが、鶏と黍(きび)の料理のもてなしを準備して、
わたしを農家に招いてくれたので行った。
緑の樹々が、村の周囲に繁り合わさって、
青い山々が、郊外に斜めに連なって見えている。 
長い廊下の窓を開けて、穀類を乾燥させる庭に面して、
酒をとっては、桑や麻のことなどの農事を話題にしている。
九月九日の重陽の節を待って、
また訪れて、菊花を愛で、菊花酒を飲みたいものだ。
 
fae9986b.jpeg※孟浩然(689~740年) 中国・盛唐の詩人。襄陽の人。官途に不遇で、郷里の鹿門山に隠れ棲んだ。山水詩に長じていた。
※具鶏黍 鶏を絞め、黍飯を炊いてもてなすのは農家のご馳走であるが、一般に貧しい中でも客をもてなす場合の表現として用いられる。ことに後漢の范式と張劭が都で友人となり、別れるときに范が二年後の某日に張の家を約束したので、劭が鶏を絞め、黍飯を炊いて待っていると、式がはたして千里の道を訪ねてきたという故事があるところから、固い信義に結ばれた友人間を象徴するものとして用いられる。
 
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目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
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くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


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