瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 東坡志林 巻二 記道人戲語
 紹聖二年五月九日、都下有道人坐相國寺賣諸禁方、緘題其一曰:賣「賭錢不輸方」。少年有博者、以千金得之。歸、發視其方、曰、「但止乞頭。」道人亦善鬻術矣、戲語得千金、然亦未嘗欺少年也。
3ca75dae.jpeg〔訳〕《道人の戯語》紹聖二(1095)年五月九日。都に一人の道人がいて、相国寺に坐っていろいろなマジナイの秘法を売っていたが、その一つに「賭博(ばくち)に絶対負けぬ法」と封筒の表に書いてあるのがあった。一人の賭博ずきの若者がそれを千金で買い、帰ってから中を開けてみると、それには、
「ただ乞頭(きっとう)をやめよ(賭博をするな)。」
と書いてあった。この道人、商売の術にもたけていたのだ。戯語によって千金を儲けたのだが、しかし決して若者をだましたわけでもなかったのである。
 
4889d25a.jpeg※乞頭:「唐国史補〔李肇他著〕」に拠れば「什一而取、謂之乞頭〔什一にして取る、これを「乞頭」と謂う〕」とある。十分の一を取ることを「乞頭」ということらしい。すなわち、賭博に於ける『寺銭』のことらしい。寺銭とは博打の主催者が売上から抜く手数料の事で、昔はお寺が博打の主催者となっていた為、寺銭と言う名前がついたという。
※李白は天宝三載〔744年〕長安を去って、梁園〔漢の初め、梁の孝王の庭園〕のあった今の河南省開封市にいたり、「梁園吟」をつくっている。この最後九句の部分より、
 
  梁園吟  李白   〔後 九句〕
舞影歌聲散綠池  舞影 歌聲 綠池に散じ
空餘汴水東流海  空しく餘す汴水の東のかた海に流るるを
沈吟此事涙滿衣  此の事を沈吟して涙衣に滿つ
黄金買醉未能歸  黄金もて醉を買ひ未だ歸る能はず
連呼五白行六博  五白を連呼し六博を行ひ
分曹賭酒酣馳輝  曹を分かち酒を賭して馳輝に酣(ゑ)ふ
酣馳輝        馳輝に酣ひて
歌且謠        歌ひ且つ謠へば 
意方遠        意 方に遠し
東山高臥時起來  東山に高臥して時に起ち來る
欲濟蒼生未應晩  蒼生を濟はんと欲すること未だ應に晩からざるべし
7b0dc00c.jpeg〔訳〕舞姫の舞いも歌声も綠池に消え去り、
今はただ汴水が空しく東に流れていくだけ、
このことを思うと涙があふれて衣をぬらす、
金をはたいて飲み続け、帰るのはやめよう
五白の掛け声を連呼し六博の博打を楽しみ、
二手に分かれて酒を賭け馳せ行くときの間に酔う、
時の間に酔い、歌いかつ謡えば、心ははるかかなたにさまよい出る
しばらく東山に臥せて時がきたら立ち上がろう、
世の民を救おうとするこの気概はまだまだ捨てたものではない
 
李白は長安を追放されるや、船に乗って黄河を下り、東へと向かった。その途次洛陽で杜甫と出会ったのは有名な話だ。その後二人は行動を共にして、更に黄河を下っていった。この詩は洛陽の下流、開封近くにある梁園に立ち寄った際の作。梁園とは前漢の文帝の子梁孝王が築いた庭園。詩にある平臺は梁園にあり、また阮籍は梁園付近の蓬池に遊んだ。李白はそうした史実を引用しながら、過去の栄華と今日の歓楽、そして未来への思いを重層的に歌い上げている。李白が誰と飲んでいるのかは定かではないが、杜甫である可能性は高いという。李白はその男と酒を酌み交わしながら、長安への後髪引かれる思いを吐露しつつ、機会があったらもう一旗あげようとする抱負を歌いこんだものであろう。
 
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