ウェブニュースより
「第一人者」影響力頼み AOKI、五輪公式商品販売狙う ―― 東京五輪・パラリンピックから1年。東京地検特捜部が大会を巡る不透明な資金の本格解明に乗り出した。大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)は容疑を否認し、徹底抗戦の構えだ。大会スポンサーだったAOKIホールディングス(HD)前会長の青木拡憲容疑者(83)から高橋元理事は何を依頼され、どう動いたのか。汚職事件の背景を追った。
「公式ライセンス商品の早期審査」「選手団の公式服受注のための人脈紹介」――。2018年9月のある日、東京都内の飲食店。高橋元理事とAOKI側の会食の席で、AOKI側から元理事に、五輪を巡って尽力を期待する内容が伝えられた。高橋元理事は黙って聞いていたという。
逮捕容疑となったのは、高橋元理事がAOKI側から理事という職務に関して依頼を受け、五輪スポンサー契約とライセンス商品の製造・販売に便宜を図る見返りに巨額の資金を受領した疑いだ。浮かび上がったのは、広告大手電通の専務を務め「スポーツビジネスの第一人者」とされる高橋元理事と大会スポンサーだったAOKIの特異な関係。両者の親交はいつ始まったのか。
原点は09年にさかのぼる。AOKIが著名なゴルフ大会に協賛した際の契約を仲介したのが高橋元理事だった。自社のジャケットを身にまとった優勝選手や企業のロゴマーク。反響に喜んだ青木前会長は契約話を持ち込んだ高橋元理事との関係性を吹聴したという。
両者の関係は13年にAOKIが東京五輪招致活動に協賛金を出したことで更に深まる。招致に貢献した年下の元理事を「師」と呼び称賛する前会長、元理事が経営する東京・六本木のステーキ店での定期会合――。関係者は「五輪事業参入は青木前会長の悲願だった。高橋さんの力は魅力的だったのだろう」と話す。
高橋元理事は17年1月、大会スポンサー契約を青木前会長に持ちかけた。青木前会長が前向きな反応を示すと、高橋元理事は後日、契約に必要な具体的な金額を提示したという。
その8カ月後、互いに信頼を寄せていた2人は一線を越えていく。17年9月12日、両者間でコンサルティング契約が結ばれ、毎月100万円ずつ支払われることが決まった。同年10月から4年半に渡って支払われた計5100万円が逮捕容疑の「賄賂」に当たる。同じ時期、コンサル契約とは別にAOKI側が計約2億3千万円を支払うことも合意に至った。
コンサル契約を機に、AOKI社内で高橋元理事に「尽力を期待する事項」(同社関係者)をリストアップする作業が動き出した。少数の幹部で検討が重ねられ、専務執行役員が要望書にまとめた。主力の紳士服事業が頭打ちとなるなか、五輪事業を「ブランド力」の強化につなげたいAOKI側の〝本音〟が詰め込まれていた。
高橋元理事に要望が伝えられた18年9月以降、電通出向者が多い組織委マーケティング局に元理事から苦情や指導の檄(げき)が飛ぶようになった。「何をぐずぐずしているんだ」「それじゃ商売にならない」。AOKI側の要望に含まれていた商品審査などを担当していたのが同局だった。
国内外のスポーツ界に顔が広く、海外の要人に広い人脈を持っていた高橋元理事。02年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会や五輪招致を巡るロビー活動でも中心的役割を担ったという。電通関係者は「スポーツ分野で高橋さんの意見は絶対」と影響力の強さを明かす。AOKI側の要望は実現し、審査を通過したAOKIのライセンス商品は19年夏に発売。計3万着以上売り上げ、PR効果も高かったとみられる。
「AOKIに便宜を図ったとしか考えられないでしょ」「コンサル業務なんて実態がない」。東京・霞が関の法務・検察合同庁舎の一室。22年7月から断続的に続いた特捜部検事の調べに、高橋元理事は一貫して容疑を否定してきた。
経費総額が1兆4238億円にのぼった東京大会。巨額の資金が動いたスポーツの祭典の舞台裏で何が起きていたのか。特捜部は22年春ごろから捜査に乗り出し、関係先を幅広く家宅捜索して関連証拠を押収した。容疑を巡って高橋元理事らと全面対決の構図となる中、特捜部はスポーツビジネス界の大物とカリスマ創業者による汚職事件の解明に向け、捜査を本格化させる。 【日本經濟新聞 2022年8月18日 2:00】
sechin@nethome.ne.jp です。
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