瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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4ff8ce3a.jpeg 李白に「廬山の瀑布を望む」と題する詩が二首ある。一首は五言の長詩であり、一首は七言絶句である。
 廬山は、江西省九江の南にあり、陶淵明がその麓に居をかまえていたことでも知られる。標高はほぼ富士山の半ばに達し、いくつもの峰をつらねるが、中でもよく知られるのは『枕草子』にも見える香炉峰、また最もけわしいのは五老峰であるといわれる。
 
  望廬山瀑布 其一 李白
 西登香爐峰  西のかた香炉峰に登り
 南見瀑布水  南のかた瀑布の水を見る
 挂流三百丈  流れを挂(か)く 三百丈
 噴壑數十里  壑(たに)を噴く 数十里
 歘如飛電來  歘(くつ)として飛電の来るが如く
 隠若白虹起  隠として白虹(はっこう)の起つが若し
 初驚河漢落  初めは驚く 河漢落ちて
 半灑雲天裏  半ば雲天の裏に灑(そそ)ぐかと
 仰觀勢轉雄  仰ぎ観れば 勢い転(うた)た雄なり
 壯哉造化功  壮(さかん)なる哉 造化の功
 海風吹不斷  海風 吹いて断えず
 江月照還空  江月 照らして空を還(めぐ)る
 空中亂潨射  空中 乱れて潨射(そうせき)し
 左右洗靑壁  左右 青壁を洗う
 飛珠散輕霞  飛珠 軽霞を散じ
 流沫沸穹石  流沫 穹石(きゅうせき)に沸く
 而我樂名山  而して我 名山を楽しみ
 對之心益閑  之に対して 心益(ますます)閑かなり
 無論漱瓊液  論ずる無かれ 瓊液を漱ぐを
 還得洗塵顔  還(ま)た得たり 塵顔を洗うことを
 且諧宿所好  且つ諧(かの)う 宿(もとよ)り好む所
 永願辭人間  永く願う 人間(じんかん)を辞するを
 
137b145f.jpeg〔訳〕西のかた 香炉峰に登ると
   南に瀧の落ちるのが見える
   岸壁にかかる高さは三百丈
   谷間のしぶきは数十里にわたる
   稲妻のように落ちるかと思えば
   朦朧として白い虹が立つようだ
   はじめは 銀河が落ちるかと驚き
   もしくは 雲海から注ぐかと息をのむ
 
   仰ぎ見れば 勢いはますます強く
   大自然の壮大な力に圧倒される
   湖うみからの風にも吹きちぎられることはなく
   江上の月の光はなすところなく照っている
   水は乱れて 空中でぶつかり合い
   苔むすあたりの岩肌を洗う
   飛び散る水は 軽やかな霞となって広がり
   流れる飛沫は 岩にあたって舞いあがる
 
   かくて私は 名山に遊び
   山と向かい合って心はますますのどかである
   清らかな水で 口を漱ぐのは当然のこと
   俗塵にまみれた顔を洗うこともできるのだ
   かてて加えて かねてからの私の好みに合っている
   俗世から辞することが永い間の願いであるからだ
 
望廬山瀑布 其二 李白
日照香炉生紫烟  日は香炉を照して紫烟を生じ
遥看瀑布挂長川  遥かに看る瀑布の長川に挂かるを
飛流直下三千尺  飛流 直下 三千尺
疑是銀河落九天  疑ふらくは是れ銀河の九天より落つるかと
 
〔訳〕日が香炉峰を照らし、山が紫色に煙っている、
   はるか彼方には滝が長い川のようにかかっているのが見える、
   その滝のまっすぐに流れ落ちる長さは三千尺、
   まるで銀河が天から落ちてきたかのようだ
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