本日は夏至。1年中で一番日の長い日である。冬至と比べれば、昼間の長さは4・5時間は違おうか?
久し振りの晴天で中天には旧暦22日の月(下弦の月)が輝いている。
ここ桜橋近辺では滅多に見られない白鷺が一羽川辺に遊んでいた。
人生の四十年は 衰え切ったほどではないが
愁いが多いために 私は白髪を垂れている
水辺の二羽の白鷺は 愁いごともないはずだ
なのにどうして 頭に糸毛を垂れているのか
一毛を抜きて天下を利せず
楊朱の言葉。
「むかし伯成子高(はくせいしこう)は、体の毛一本を抜くほどのわずかの犠牲でも、それによって他人の利益を計ろうとはせず、大名の地位を棄てて隠者となり農耕に従事した。また偉大な帝王であった禹は、一身のために自己の利益を計ろうとはせず、そのために身体じゅうが半身不随になったと言う。
このように古人は、一本の毛を抜けば天下の利益になる場合でも他人のために犠牲は払わず、世界全体が吾が身の養いに捧げられても、それを自分のものとはしなかった。もしも人々が体の毛一本も他人のために犠牲にしようとはせず、また人々が天下の利益を計ろうとしなければ、そのときこそこの世界に本当の平和が実現するのだ。
その言葉を聞いた墨子の弟子の禽滑釐(きんこつり)が楊朱に訊ねて言った。
「君の体に生えている毛一本を抜いて、それで世の中か救われると言うのであれば、君はそれをするだろうか」
すると楊朱先生は答えた。
「世の中は勿論一本の毛ぐらいで救われるものではない。」
禽滑釐が、「もし救われるものならばそれをしますか」と、詰め寄ると、楊朱は黙って何も答えなかった。
さて、禽滑釐が退出して楊朱の弟子の孟孫陽(もうそんよう)にその話をすると、孟孫陽はこう言った。
「君には楊先生のお心がよく分っていないのだ。私がひとつ説明してみよう。もし君の肌膚(はだ)を傷つけて大金が貰えるとすれば、君はそれをするだろうか」
禽滑釐がやや暫し黙っていると、孟孫陽はさらに言葉を継いだ。
「一本の毛は肌膚より微小であり、肌膚は体の一節より微小なことは明白である。だとすれば一本の毛が集まって肌膚ができあがり、肌膚が集まって体の一節が出来上がるのであり、一本の毛は言うまでも無く体全体の万分の一の存在と言うことになる。どうして軽視していいものだろうか」
すると、禽滑釐は言った。
「私は、君に答える術が分らない。だとすれば誰かに問い質(ただ)すことになるが、君の主張を老耼や関尹に問い質せば、君の主張のほうが正しいだろう。しかし、私の主張を偉大な帝王の禹や、禹を理想とする墨翟に問い質せば、私の主張のほうが正しいであろう」
孟孫陽はそこで辺りを見回し、己の仲間達とよそ事を喋りあって話をそらした。
sechin@nethome.ne.jp です。
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