今にも降りそうな空模様。思い切って出かけることにする。時に5時。吾妻橋~白鬚橋をテラス沿いに一巡する。
白鬚橋を渡る頃から、小雨模様。橋場のテラスに来た頃、本降り。雨の中をずぶ濡れになりながら何時もの歩調で帰宅する。家に着くころにはどうやら、雨も小止みになっていた。
聖知を得た己を病気だと考えた龍叔
龍叔という男が名医として知られた文摯(ぶんし)に向って言った。
「君の医術は精妙である。私は病気にかかっているが、治してもらえることが出来るだろうか?」
すると文摯は言った。
「仰せの通りに致しましょう。だが初めにあなたの病気の症状を仰ってください」
龍叔は答えた。
「私は村中のものが誉めても名誉だとは思わず、国中の人が毀(そし)っても恥辱だとは思わない。何かを得ても嬉しいとは思わず、失っても悲しいとは思わない。生を死と同じにみ、富を貧と同じにみ、人間を豚と同じにみ、己を他人と同じにみ、自分の家に居ても旅館に居ると変らず、自分の郷里を戎蕃(えびす)の国と同じように考える。すべてこのような種々の病気は、爵位や褒賞を与えたとて励ますことは出来ず、刑罰を加えたとて威(おど)すことはできず、盛衰利害も左右することは出来ず、哀楽の感情も変化させることは出来ない。こんなことでは、もちろん主君に仕えることも、親友と交わることも、妻子を治めてゆくことも、召使を取り締まってゆくことも出来はしない。これはいったいどういう病気なのであろうか。どのようにしてこの病気を治すことが出来るのであろうか」
龍叔がこう訴えると、文摯はそこで龍叔煮命じて太陽に背を向けて立たせ、己はそれから太陽の方に向かって立ち龍叔の体を離れたところから診察し、やがてこう言った。
「ああ、私はあなたの心を診察しました。あなたの心のある場所は空っぽになっています。精神とほとんど同じです。ただあなたの心臓にある六つの穴は、うまく疎通していますが、一つの穴だけ塞がっています。あなたは今聖人の悟りの境地にありながら病気だと思っておられるのも、そのせいであるかも知れません。これは私の未熟な医術で治せる病気などでは到底ありません」
sechin@nethome.ne.jp です。
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