瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
靡靡逾阡陌 靡靡として阡陌を逾ゆれば
人煙眇蕭瑟 人煙眇(びょう)として蕭瑟(しょうしつ)たり
所遇多被傷 遇ふ所は多く傷を被り
呻吟更流血 呻吟して更に血を流す
回首鳳翔縣 首を回らす鳳翔縣(ほうしょうけん)
旌旗晚明滅 旌旗(しょうき)晚に明滅す
前登寒山重 前(すす)みて寒山の重なれるに登り
屢得飲馬窟 屢々飲馬の窟を得たり
〈訳〉のろのろと畑の中の道を行くと/人家の煙が遥か彼方にさびしく立ちのぼっている/途中で出会う人は傷ついているものが多く/あるものは呻き あるものはちをながしている/行在所のある鳳翔県の方を振り返ると/軍旗が西日の中で見え隠れしている/更に進んで寒々と山の重なって聳え立つのに登る/所々に馬に水かいする岩穴がある
阜郊入地底 阜郊地底に入り
涇水中蕩□ 涇水中に蕩□(とうこう)たり
猛虎立我前 猛虎我が前に立ち
蒼崖吼時裂 蒼崖(そうがい)吼ゆる時裂く
菊垂今秋花 菊は垂る今秋の花
石戴古車轍 石は戴く古車の轍(てつ)
青云動高興 青云(せいうん)高興を動かし
幽事亦可悅 幽事(ゆうじ)亦悅ぶべし
〈訳〉邠州の平野は山の下 地の底のように低く見え/涇水が盆地の真ん中を水も豊に流れている/強そうな虎が私の前に立ちふさがり/吼えると青々とした崖がゆらいで裂けそうだ/菊は新しい花を たれるほど咲かせ/石の上には車の跡がある 誰かがずっと前に通った跡だ/青空は私の心をはずませ/山中の自然もなかなかいい
山果多瑣細 山果は多く瑣細(ささい)なり
羅生雜橡栗 羅生(らせい)橡栗(しょうりつ)を雜(まじ)ふ
或紅如丹砂 或は紅にして丹砂の如く
或黑如點漆 或は黑くして點漆(てんしつ)の如し
雨露之所濡 雨露の濡す所
甘苦齊結實 甘苦齊(ひと)しく結實す
緬思桃源內 緬(はるか)に桃源の內を思ひて
益歎身世拙 益々身世の拙なるを歎く
坡陀望阜寺 坡陀として阜寺を望めば
岩谷互出沒 岩谷互ひに出沒す
我行已水濱 我が行は已に水濱
我仆猶木末 我仆(がふ)は猶木末なり
〈訳〉山の木の実には小さなものが沢山ある/いっぱいなっていて橡の実や栗なども混じっている/あるものは丹砂のように真っ赤だし/あるものはぽつぽつと漆のように黒い/雨や霧にしっとりと濡れ/甘いのも苦いのもみな実っている/遥か遠くのかの桃源郷を思いやって/ますます私は自分の処世の拙さを嘆くことになった/鄜州にある祭壇が広々とした彼方に見え始め/そこは岩と谷が入り混じっている/私はもう川の畔まで下っているのに/従僕たちはまだ山の上の梢の所を通っている
鴟梟鳴黃桑 鴟梟〈しきゅう〉黃桑〈こうそう〉に鳴き
野鼠拱亂穴 野鼠〈やそ〉亂穴〈らんけつ〉に拱(きょう)す
夜深經戰場 夜深くして戰場を經れば
寒月照白骨 寒月白骨を照らす
潼關百万師 潼關〈どうかん〉百万の師
往者散何卒 往者散ずること何ぞ卒(すみやか)なる
遂令半秦民 遂に半秦の民をして
殘害為异物 殘害せられて异物(いぶつ)と為らしむ
〈訳〉梟が枯れた桑の木で鳴き/野鼠はあちこちの畑の穴蔵の所でちょこんとしている/夜中に戦場のあとを通ると寒々とした月の光が白骨を照らしている/潼関の戦いで百万からの軍が/どうしたわけかあっという間に敗れ/結局秦の地方の大半の人民が/殺され溺れ死に この世のものでなくなったのだ
人煙眇蕭瑟 人煙眇(びょう)として蕭瑟(しょうしつ)たり
所遇多被傷 遇ふ所は多く傷を被り
呻吟更流血 呻吟して更に血を流す
回首鳳翔縣 首を回らす鳳翔縣(ほうしょうけん)
旌旗晚明滅 旌旗(しょうき)晚に明滅す
前登寒山重 前(すす)みて寒山の重なれるに登り
屢得飲馬窟 屢々飲馬の窟を得たり
〈訳〉のろのろと畑の中の道を行くと/人家の煙が遥か彼方にさびしく立ちのぼっている/途中で出会う人は傷ついているものが多く/あるものは呻き あるものはちをながしている/行在所のある鳳翔県の方を振り返ると/軍旗が西日の中で見え隠れしている/更に進んで寒々と山の重なって聳え立つのに登る/所々に馬に水かいする岩穴がある
阜郊入地底 阜郊地底に入り
涇水中蕩□ 涇水中に蕩□(とうこう)たり
猛虎立我前 猛虎我が前に立ち
蒼崖吼時裂 蒼崖(そうがい)吼ゆる時裂く
菊垂今秋花 菊は垂る今秋の花
石戴古車轍 石は戴く古車の轍(てつ)
青云動高興 青云(せいうん)高興を動かし
幽事亦可悅 幽事(ゆうじ)亦悅ぶべし
〈訳〉邠州の平野は山の下 地の底のように低く見え/涇水が盆地の真ん中を水も豊に流れている/強そうな虎が私の前に立ちふさがり/吼えると青々とした崖がゆらいで裂けそうだ/菊は新しい花を たれるほど咲かせ/石の上には車の跡がある 誰かがずっと前に通った跡だ/青空は私の心をはずませ/山中の自然もなかなかいい
山果多瑣細 山果は多く瑣細(ささい)なり
羅生雜橡栗 羅生(らせい)橡栗(しょうりつ)を雜(まじ)ふ
或紅如丹砂 或は紅にして丹砂の如く
或黑如點漆 或は黑くして點漆(てんしつ)の如し
雨露之所濡 雨露の濡す所
甘苦齊結實 甘苦齊(ひと)しく結實す
緬思桃源內 緬(はるか)に桃源の內を思ひて
益歎身世拙 益々身世の拙なるを歎く
坡陀望阜寺 坡陀として阜寺を望めば
岩谷互出沒 岩谷互ひに出沒す
我行已水濱 我が行は已に水濱
我仆猶木末 我仆(がふ)は猶木末なり
〈訳〉山の木の実には小さなものが沢山ある/いっぱいなっていて橡の実や栗なども混じっている/あるものは丹砂のように真っ赤だし/あるものはぽつぽつと漆のように黒い/雨や霧にしっとりと濡れ/甘いのも苦いのもみな実っている/遥か遠くのかの桃源郷を思いやって/ますます私は自分の処世の拙さを嘆くことになった/鄜州にある祭壇が広々とした彼方に見え始め/そこは岩と谷が入り混じっている/私はもう川の畔まで下っているのに/従僕たちはまだ山の上の梢の所を通っている
鴟梟鳴黃桑 鴟梟〈しきゅう〉黃桑〈こうそう〉に鳴き
野鼠拱亂穴 野鼠〈やそ〉亂穴〈らんけつ〉に拱(きょう)す
夜深經戰場 夜深くして戰場を經れば
寒月照白骨 寒月白骨を照らす
潼關百万師 潼關〈どうかん〉百万の師
往者散何卒 往者散ずること何ぞ卒(すみやか)なる
遂令半秦民 遂に半秦の民をして
殘害為异物 殘害せられて异物(いぶつ)と為らしむ
〈訳〉梟が枯れた桑の木で鳴き/野鼠はあちこちの畑の穴蔵の所でちょこんとしている/夜中に戦場のあとを通ると寒々とした月の光が白骨を照らしている/潼関の戦いで百万からの軍が/どうしたわけかあっという間に敗れ/結局秦の地方の大半の人民が/殺され溺れ死に この世のものでなくなったのだ
この記事にコメントする
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
sechin@nethome.ne.jp です。
sechin@nethome.ne.jp です。
カレンダー
01 | 2025/02 | 03 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
最新コメント
[爺の姪 01/13]
[レンマ学(メタ数学) 01/02]
[m.m 10/12]
[爺の姪 10/01]
[あは♡ 09/20]
[Mr.サタン 09/20]
[Mr.サタン 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
最新トラックバック
ブログ内検索
カウンター