瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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東京夢華録 巻五 娶婦 二
 婿於床前請新婦出、二家各出綵段、綰一同心、謂之「牽巾」、男掛於笏、女搭於手、男倒行出、面皆相向。至家廟前參拜畢、女復倒行、扶入房講拜。男女各爭先後對拜畢、就床、女向左、男向右坐、婦女以金錢綵果散擲、謂之「撒帳」。男左女右、留少頭髮、二家出疋段、釵子、木梳、頭鬚之類、謂之「合髻」。然後用兩盞以綵結連之、互飲一盞、謂之「交盃酒」。飲訖、擲盞并花冠子於床下、盞一仰一合、俗云「大吉」、則眾喜賀。然後掩帳訖。宮院中即親隨人抱女婿去、已下人家即行出房、參謝諸親、復就坐飲酒。散後。次日五更、用一卓、盛鏡臺鏡子於其上、望上展拜、謂之「新婦拜堂」。次拜尊長親戚、各有綵段巧作鞋枕等為獻、謂之「賞賀」。尊長則復換一疋回之、謂之「答賀」。婿往參婦家、謂之「拜門」。有力能趣辦、次日即往、謂之「復面拜門」;不然、三日七日皆可。賞賀亦如女家之禮。酒散、女家具皷吹從物、迎婿還家、三日、女家送綵段、油蜜蒸餅、謂之「蜜和油蒸餅」。其女家來作會、謂之「煖女」。七日則取女歸、盛送綵段頭面與之、謂之「洗頭」。一月則大會相慶、謂之「滿月」。自此以後、禮數簡矣。
287f9d65.jpeg〔訳〕《婚礼二》花婿が床(ねだい)の前で花嫁に帳(とばり)の外に出てくるように言うと、両家から出し合った色絹を、一つの同心結びに結い、これを「牽巾(ちぎりのぬの)」という。この絹を婿は笏(しゃく)に、嫁はてにかけて、互いに顔を向き合わせたまま婿が後ずさりして部屋を出る。家廟の前に出て参拝をすませると、こんどは嫁が後ずさりして行き、部屋に入ると拝をするのだが、婿と嫁はそれぞれ先を争って拝をしあう。それがすむと床にあがるが、嫁は左向きに婿は右向きに坐り女たちが金銭・色絹・果物をまき散らす。これを「撒帳(ねやまき)」という。男が左、女が右で、少し髪の毛をのばし、両家から色絹・釵子(かんざし)・木櫛・かもじのたぐいを出す儀式を「合髺(まげあわせ)」という。つぎに二つの杯を色絹の紐でつなぎ、いっしょにその杯で酒を飲み、これを「交杯酒(さかずきかわし)」という。飲み終わると、杯と花冠子(はなかむり)を床の下に投げ、杯のひとつが上向き、ひとつが下向きになれば、俗に大吉といって、みなめでたがる。それから帳(とばり)をおおうのである。そのあと、宮中ではお側づきの者が花婿を抱えて閨房を出、下(しも)ざまのいえではそのまますぐ閨房を出て、親族たちに挨拶をして、また座について酒を飲んだ。式が散じて、つぎの日五更(午前四時ごろ)に卓子(テーブル)の上に鏡台と鏡を置き、花嫁は上天を望んで礼拝し、これを「新婦拝堂」という。つぎに尊長親戚を拝し、それぞれに色絹や手作りの布靴とか枕を献じ、これを「賞賀」といった。婿が嫁の家に挨拶に行くのを「拝門(さとまいり)」という。できることならつぎの日すぐ行くが、これを「復面拝門(おりかえしのさとまいり)」という。そうでなかったら三日後でも七日後でもいい。お礼返しは、嫁の家がしたと同様にする。酒宴がすむと、嫁の家では楽隊やら行列の飾り物やらをととのえて婿たけを贈り帰す〔嫁は実家に残るのである)。婚礼後三日後に、嫁の家では色絹・油・蜜と蒸餅(むしがし)を届け、これを「蜜和油蒸餅(みつわゆじょうへい)」という。嫁の家の者が婿の家に来て宴会を開くのは「煖女(むすめはげまし)」といった。七日には実家に残った嫁を婿の方から迎えにきて婚家に帰る。その際嫁の家では色絹・頭飾りを十分嫁に与え、これを「洗頭(せんとう)」といった。一ヵ月目には両家が集まって大宴会を開き祝いあう。これを「満月」といった。これからあとの儀礼はたいしたものはない。
 
※同心結び:中国では男女の愛情を示す結び方とされている。日本では「けまん結び」とよばれ、組紐を輪違いにむすぶもの
※撒帳:この行事は漢の武帝が李夫人を迎えたときに始るという。帝は夫人を帳中に入れ、宮女たちに五色の同心結びや花果を投げさせ、着物の裾にこれを取って盛り、得ること多ければ子も多しとした。のち唐の中宗の頃になると長命富貴と刻のある銭をまいたという。
※合髺:両家から出した簪類で新郎新婦が結髪する儀式であろう。
※拝堂:拝天地ともいい、新婚のものが礼堂で天地を拝する儀式である。
※蜜和油蒸餅:中国では「蜜裏調油」といえば親密でしっくり行くことを意味し、蜜と油は夫婦円満の縁起物とされている。蒸餅とは小麦粉をこねて蒸した食品。中国で言う「餅」は日本とは異なり、小麦粉を原料として、焼いたり蒸したりしてつくる食品の総称である。この贈物をすることを「送三朝礼」といい、色絹、アヒルの卵、金銀の瓶に入れた蜜と油、それに餅などを、嫁の家から婿の家に贈るのである。
※洗頭:拝門は新婚夫婦二人がいっしょにする。そして婿だけが先に家に帰り、嫁は実家に残って、あとで婿の方から嫁を迎えに来る。この時、実家が嫁に色絹・頭飾りなどを与えて返すのが「洗頭」。本文ではこの行事の間に「煖女」の説明が入っているが、これは婚礼後九日以内のある一日に行うものであるという。
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