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  『東京夢華録』を拾い読みしているが、内容によく理解できないところが多くて、なかなか先に進めない。
 
f4d7a69b.jpeg 北宋は、汴梁〔べんりょう、今の河南省開封〕を帝都とし汴京または東京(とうけい)と呼び、洛陽を西京(せいけい)と呼んだ。その東京がもっとも繁栄した北宋第八代皇帝徽宗皇帝の崇寧(すうねい)宣和年間〔1102~1125年〕頃の姿を、南宋初期の紹興十七〔1147〕年に、孟元老〔号は幽蘭居士〕なる人が追懐して書いたのが『東京夢華録』である。この書について、著者はその自序で「古人は夢に華胥(かしょ)という理想国に遊んだが、私もいま東京にいたころのよき時代を追懐すると華胥の夢からさめたように思え、そこで本書を『夢華録』と名付けた」といっている。金に占領された東京の住民の多くは、南宋の都臨安〔いまの淅江省杭州〕に逃れたものの、みな佳き時代の佳き都東京をひどく懐かしんだようで、本書が淳煕十四〔1187〕年二観光されると臨安の人士に大いに愛読されたという。
 隋・唐代の首都・長安は人口100万人に達した巨大な都市であったが、条坊ごとに周囲を牆壁に囲まれ、条坊間の夜間通行が制限されるなど閉鎖的で、都市文化も貴族中心であった。これに対し、北宋代の開封には通行の制限はなく、瓦子(がし)と呼ばれる盛り場では、昼夜を問わず飲食店・商店・劇場といった店が開かれ、大道芸が行われるなど、多くの住民が都市生活を謳歌し、繁栄を極めていた。
栄華期の開封を回想して誌された『東京夢華録』は、単なる旧都の回想録に留まらず、北宋代の首都・開封の市民生活を詳細に描いた貴重な風俗志でもあるという。
 著者の孟元老についてはまだよく判っていないらしい。本書の彼の自伝に
「亡父に従って官吏として南北各地に移り住み、崇寧二〔1103〕年に都に上り、城内西部、金梁橋の西の夾道の南に住まいを定め…… 靖康元年〔北宋の亡びた年1126年〕のあくる年南に来た」
とあることから、東京には20余年住んでいたということになる。
 
東京夢華録 巻二 御街
 坊巷御街、自宣德樓一直南去、約闊二百餘步、兩邊乃御廊、舊許市人買賣於其間、自政和間官司禁止、各安立黑漆杈子、路心又安朱漆杈子兩行、中心御道、不得人馬行往、行人皆在廊下朱杈子之外。杈子裡有磚石甃砌御溝水兩道、宣和間盡植蓮荷、近岸植桃李梨杏、雜花相間、春夏之間、望之如繡。
〔訳〕《御街(ぎょがい)》城内の御街という通りは、宣徳楼から真南に走り、幅は約二百余歩あった。通りの両側は御廊といい、以前は商人がそこで商いをするのを許されていたが、政和年間〔北宋、徽宗の年号、1111~1117年〕に役所が禁止し、両側の御廊にそれぞれ黒い漆塗りの柵〔直欄杆(ちょくらんかん)〕が立てられ、その真ん中の御廊は、人馬の通行を許さず、通行人はみな廊下や朱の柵の外を通った。柵の中には磚石(れんが)でたたんだ掘割が二筋あり、宣和年間(徽宗の1119~1125年)に掘割一面にハスを植えた。岸辺にはモモ・スモモ・ナシ・アンズを植えたので、色とりどりの花がまじりあい、春から夏にかけて、これを望めば、色あざやかな刺繍のようであった。
 
cad3eefe.jpeg※御街とは、天子の通る大通りの意。北宋〔960~1127年〕の都、東京〔とうけい、今の河南省開封〕内の、大内すなわち宮城の南正面の門「宣徳門」から、旧京城すなわち内城の南正面の門「朱雀門」に至る幅約三○○メートルの道路。
※宣徳楼とは、宣徳門のことで、大内南面中央に位置する宮城の正門であり壮麗な楼門であった。
※柵は、原文では「杈子(さし)」とあり、宋代には寺廟や楼門などに人間の身長ほどの高さの柵〔直欄杆〕を立てて人の入るのを防ぎ、「拒馬杈子(きょばさし)」といった。
 
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雨ですネ
 ご無沙汰いたしております。蒲田のシンです。お元気ですか。こちらは、なんとか元気にしております。
 ところで、先日はブログ集を確かに拝受いたしました。お礼を言うのが遅れてしまって申し訳ございません。ありがとうございました。
 難しい『東京夢華録』をまだ読んだことがないので、大変勉強になります。今後もよろしくお願いします。
シン 2012/06/09(Sat) 編集
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目高 拙痴无
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92
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