瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 東京夢華録 巻三 般載雜賣
 東京般載車、大者曰「太平」、上有箱無蓋、箱如构欄而平、板壁前出兩木、長二三尺許、駕車人在中間、兩手扶捉鞭駕之。前列騾或驢二十餘、前後作兩行;或牛五七頭拽之。車兩輪與箱齊、後有兩斜木腳拖夜;中間懸一鐵鈴、行即有聲、使遠來者車相避。仍於車後繫驢騾二頭、遇下峻險橋路、以鞭謕之、使倒坐綞車、令緩行也。可載數十石。官中車惟用驢、差小耳。其次有「平頭車」、亦如「太平車」而小、兩輪前出長木作轅、木梢橫一木、以獨牛在轅內、項負橫木、人在一邊、以手牽牛鼻繩駕之、酒正店多以此載酒梢桶矣。梢桶如長水桶、面安靨口、每梢三斗許、一貫五百文。又有宅眷坐車子、與「平頭車」大抵相似、但椶作蓋、及前後有构欄門、垂簾。又有獨輪車、前後二人把駕、兩旁兩人扶柺、前有驢拽、謂之「串車」、以不用耳子轉輪也。般載竹木瓦石。但無前轅、止一人或兩人推之。此車往往賣糕及餻麋之類人用、不中載物也。平盤兩輪、謂之「浪子車」、唯用人拽。又有載巨石大木、只有短梯盤而無輪、謂之「癡車」、皆省人力也。又有駞騾驢馱子、或皮或竹為之、如方匾竹、兩搭背上、斛㪷則用布袋駞之。
〔訳〕《運送車輌》
9670dedd.jpeg 東京の荷車は、大きいものを「太平」といった。車台の上に板塀がついているが無蓋である。板塀は手摺上をした平板なもので、その前方に長さ二、三尺あまりの二本の腕木が突き出している。馭者はその間に身を置き、鞭と取り綱を左右の手に持って車をあやつる。前にはラバあるいはロバ二十余頭をずらりと二列につなぐか、または牛が五頭から七頭ぐらいで引く。車の両輪は板塀と高さが等しい。車台の後ろには二本の斜めに延びた木の足があり、その中間に鉄の鈴がつるしてあって、動くと鳴り、遠くから通行人にも車を避けるよう注意させた。なお、車の後ろにもロバかラバを二頭つなぎ、急な道や橋を下る場合、鞭をふるっておどし、車を後ろから引かせて制動をかけ、ゆっくりと進ませた。この車は数十石〔数トン〕もの荷を積載することができた。官庁の車も、ただロバを用いる点が違うだけで、これとほとんど同じであった。その次に平頭車というのがあった。これは太平車に似てより小さく、両輪の前方に長い木を突き出して轅木(ながき)とし、その端に横木を渡し、1頭の牛をその轅木の中に入れて、横木を牛のうなじに乗せた。人はその横に立ち、手で牛の鼻綱をとって引いて行くのだ。正酒店(おやみせ)は多くこの車に酒の梢桶(たる)をのせた。梢桶は、長い水桶状で、表面に靨口(えくぼぐち)がついている。毎梢(ひとたる)に三斗ばかりはいり、値段は一貫五百文であった。
f2731f92.jpeg また、婦人之乗りの牛車があった。平頭車とだいたい同じだが、ただシュロで屋根を葺き、前後には手摺のついた出入り口があり、簾を垂らしていた。また、車輪が一つだけの車もあった。前後を二人で持ってあやつり、両側も二人がささえ持つ。前にロバをつけて引くのは「串車(かんしゃ)」といい、耳子転輪を用いなかった。この車は竹木瓦石を運搬した。前の轅木(ながえ)がなく、一人きりか、あるいは二人ぐらいで押して行く一輪車もあった。この車は糕(むしもの)や餻麋(こうび)を売るものが多く用い、物品を運搬するにはもちいなかった。平らな車台に両輪がついたものだけは「浪子車(ろうししゃ)」といい、人が引くのにだけ用いた。また巨石大木を載せるのに、短いはしご形で、車輪のない車台だけのものがあり、これを癡車(ちしゃ)といった。また、ロバ・ラバの背に駄載する荷は、皮あるいは竹で作った四角く平たい竹かご状のもので、背の両側に振り分けて載せた。穀物は布袋を用いて駄載した。
 
※太平=この車はばかでかくて鈍重であり、いったん雨雪に会えば身動きできなくなるので、俗に太平車と称したという。
※板塀=原文では「箱」。車の物を積載する囲いの意で、必ずしも箱形をしていなくてもよい。太平車の「箱」なるものは、車台の左右両側に立てられた、手摺状の二枚の板塀であり、車台の前後は開いている。
※梢桶=梢は筲(ふご)のこと。中国では水売りが天秤棒で担ぎ運ぶ水桶を「水筲(シュイシャオ)」という。
※靨口=不明。「清明上河図」に描かれている梢桶をのせた平頭車ふうの車の図に、梢桶の表面の真ん中に、それを抜いて酒をくみ出すとおぼしき栓のようなものがついている。これをいうのであろうか。
※牛車=原文では「車子」。一頭の牛で引く婦人乗りの車を車子といった。
※耳子転輪=不明。一輪車を両側から支えて動かす者のことか、あるいは両側につける補助輪のようなものか。
※餻麋=点心の一種か。
※浪子車=「よたぐるま」といった意味。日本の大八車のようなもの。
※癡車=「まぬけぐるま」といった意味。いわゆる「ころ」の台。
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