瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 東京夢華録 巻八 四月八日
 四月八日佛生日、十大禪院各有浴沸齋會、煎香藥糖水相遺、名曰「浴佛水」。迤邐時光晝永、氣序清和。榴花院落、時聞求友之鶯;細柳亭軒、乍見引雛之燕。在京七十二戶諸正店、初賣煑酒、市井一新。唯州南清風樓最宜夏飲。初嘗青杏、乍薦櫻桃、時得佳賓、觥酧交作。是月、茄瓠初出上市、東華門爭先供進、一對可直三五十千者。時果則御桃、李子、金杏、林檎之類。
〔訳〕四月八日は釈迦の誕生日だ。十大禅寺ではそれぞれ潅仏会(かんぶつえ)を開き、香薬を煎じた糖水(あまちゃ)を贈り、これを「浴仏水(よくぶつすい)」といった。うららかでのどかな、時は清和(せいわ)と呼ばれる四月である。ザクロの花が庭に咲けば、友を求めるウグイスの声が聞かれ、細い柳の葉がしだれかかる亭(ちん)の軒端には雛(ひな)を連れたツバメが見られる。都の七十二軒の正酒店(おやみせ)では、初の煮酒(しゃしゅ)を売り出し、市井の酒は一新する。だが州南の清風楼がもっとも夏飲むのによろしい。青いアンズを賞味したり、サクランボをすすめたり、よき飲み友だちを得ては杯をくみかわすのだった。この月にユウガオの果実が初めて市場に出る。東華門では先を争ってこれを売り出し、ひとつで三十貫から五十貫もの値段がした。この時期の果物といえば、モモ・スモモ・アンズ・リンゴのたぐいであった。
 
※清和:俗に陰暦四月を清和月という。ちょうど現在の初夏の頃である。
※煮酒:宋代には酒は専売で政府の酒庫(さかぐら)に収納された。四月には煮酒を、九月には清酒の庫を開いた。煮酒は夏に飲む酒である。
※ユウガオ:原文では「茄瓠(かこ)」。ユウガオの実、すなわちフクベとかナリヒサゴとか呼ばれるものには二種あり、細長い果形のものは若い果実を食用にし、丸い果形のものは干瓢(かんぴょう)の原料になる。
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