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ウェブニュースより
尊富士に大の里 新鋭の相次ぐ躍進の背景(浅香山博之) ―― 3月の大相撲春場所で尊富士が110年ぶりの新入幕優勝を果たし、5月の夏場所では幕内3場所目の大の里が史上最速のデビューから所要7場所で賜杯を抱いた。生きのいい新鋭の出現は明るい話題だが、上位陣を中心とする先輩力士たちは一体、何をやっているんだという歯がゆい思いも正直ある。
 
新鋭が相次いで躍進する要因は、かなり前に端を発していると思う。このコラムでも何度も指摘してきたように、横綱白鵬(現宮城野親方)の全盛期くらいから、若手の稽古量が激減した。
だから若手がなかなか力をつけず、白鵬が引退するまで世代交代が起こらなかった。今の中堅やベテランの幕内力士たちは自分たちで世代交代を成し遂げたのではなく、白鵬が最強のまま土俵を去ったから上位に上がれたにすぎない。
だから、強い新鋭が上がってきた途端に優勝をもっていかれてしまう。2023年名古屋場所の伯桜鵬にしても、最近は常に新入幕力士が終盤まで賜杯争いに絡むようになっている。上位陣のみならず、今の中堅以上の関取衆は全体的に若手時代からの稽古の貯金が少ない。それが今になって露呈してきたということだろう。
 
我々の時代も親方衆から「稽古が足りない」と言われていたものの、今ほどではなかった。同期入門の若乃花と貴乃花(いずれも元横綱)の「若貴兄弟」は入門当初の相撲教習所時代から尋常ではない稽古量だったので、自分たちがどれだけ稽古しても追いつけなかった。一番強い力士が一番稽古しているわけだから、我々もさらに必死になった。今の力士たちからはそういう切磋琢磨(せっさたくま)が感じられない。
30歳をすぎた横綱大関ならまだしも、20代の若手が10番や20番で稽古を切り上げるなんて論外だと思う。最近の若手力士は「調整」という言葉をよく口にするが、私に言わせれば20代に調整の期間などない。毎日、なりふり構わず稽古に没頭すべき年代だと思う。
昨今の稽古場では、昔ではあり得ない光景も目にする。申し合いでは途中で力を抜いてしまうし、何番か取ったら「ちゃし」(お礼の気持ちなどを表す角界独特の挨拶言葉)などと言って、勝手に稽古を切り上げてしまう。以前は師匠が「もういい」と言うまで稽古を続けるのが当たり前だった。最近は「ちょっと違うんじゃないか」と思うことばかりだ。
ハラスメントにより厳しい目が注がれる時代になり、親方衆もなかなか弟子を追い込む指導はできない。だから、力士たち本人がより自覚を持って自分からやらないといけない。親方が厳しくしないことに甘えるのではなく、自分たちから「もう少しやります」と言うくらいの気概がほしい。若手のうちは親方から「それくらいにしておけ」と止められるくらいまでやるべきだ。
 
こうやって甘やかされた世代がいずれ引退して親方になることも危惧している。自分を限界まで追い込んだ経験がないまま指導者になれば、弟子にどこまでならやらせても大丈夫というさじ加減も分からないのではないか。
大学を出たばかりの尊富士(日大出身)や大の里(日体大出身)に負けた先輩力士たちが、あまり悔しがっているようには見えないのももどかしい。私は15歳で入門し、三段目だった1718歳くらいの時には日大などの学生が出稽古に来ると、「負けられない」という気概を持って稽古した。私たちが入門わずか2〜3年の駆け出しのころから持ち合わせていた「プロ意識」が、今の力士たちにはないのかなと思ってしまう。
学生相撲出身同士でも、先輩が後輩にあっさり負けて悔しくないのだろうか。角界でのキャリアは自分の方が長いんだという意地をもう少し見せてほしい。
今の上位陣への注文がもう一つ。右四つの横綱照ノ富士と突き押しの大関貴景勝を除く力士には、この形になれば絶対に勝てるという「型」がない。琴桜と豊昇龍の2大関と関脇に転落した霧島の3人には何でもできる器用さがある一方、これという特徴がないことも成績が安定しない要因だろう。
 
私は現役時代、左四つ右上手の形になればどんな相手でもなんとかなるという「よりどころ」があったことは大きかった。本来はそういう型ができないと関取にはなれないものだが、それがないまま大関まで昇進してしまったという印象を受ける。先場所の大の里も右を差せば盤石だったように、型がある力士はやはり強い。
琴桜、豊昇龍、霧島は20代だ。稽古量を落とすのはまだ早い。がんがん稽古して、自分の型をつくり、新鋭の壁になってほしい。 (元大関魁皇)
【日本經濟新聞 202476 5:00
 
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