ウェブニュースより
これも「一強」の弊害なのか…キックバック裏金問題、安倍派「5人組」全員に広がる ―― 自民党派閥の政治資金パーティー券問題で、安倍派(清和政策研究会)の塩谷立座長と萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相の3氏側も、派閥からキックバックを受けていたとみられることが9日、関係者への取材で分かった。政治資金収支報告書に収入として記載していなかったという。松野博一官房長官、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長が各1000万円を受領したとされ、裏金問題は政府や党の要職を担う最大派閥・安倍派幹部「5人組」全員に広がった。
◆「何をやっても大丈夫」と勘違い?
2012年の政権復帰後、安倍晋三元首相は長期政権を樹立。安倍氏が首相を辞任した後も、数の力を背景に政権運営に大きな影響力を行使してきた。その水面下で裏金づくりは進められてきた。
安倍派は2000年以降、4人の首相を輩出し、この23年間で約15年も首相の座を占めた。第2次安倍政権は7年8カ月続き、「一強」の政治状況が続いた。今回の疑惑は、政治資金規正法違反の不記載罪などの時効5年を踏まえ、安倍政権後半の18年分から捜査対象となっている。
自民党で大きな権力を握り続けた最大派閥は、組織的な裏金づくりを行っていたと指摘される。党内では「『自分たちは何をやっても大丈夫だ』と安倍派は勘違いしていた」(中堅)との声が漏れる。裏金はそれぞれの議員の政治活動に使われてきた。
◆岸田首相、要職に起用して安倍派を懐柔
党内基盤が弱い岸田文雄首相は、この最大派閥の力を最大限、利用してきた。21年の党総裁選を勝ち抜き、首相になることができたのも、安倍氏の全面的な支援があったからだ。首相就任後は安倍派幹部を要職に起用することで、安倍派を味方につけ、自身に対する批判を封じ込めてきた。首相が政権運営で細心の注意を払ってきたのは党内力学だった。裏金問題が表面化し、野党から国会で国民への説明を求められても、首相は指導力を発揮せず、派閥に対応を委ねていた。
首相の岸田派は党内第4派閥で46人。これに対して安倍派は99人で、第2派閥の麻生派(56人)、第3派閥の茂木派(53人)を大きく引き離す。首相が適材適所とうたった9月の内閣改造でも、安倍派から最多タイの4人を起用。党役員も含めて「5人組」全員を留任させるなど、安倍派への配慮は際立った。首相が来年秋の党総裁選で再選するには、安倍派の協力が欠かせないからだ。
自民党安倍派(清和政策研究会) 安倍晋三元首相の祖父である岸信介氏が率いた岸派を源流とし、1979年、福田赳夫元首相が創設した。創設時の名称は「清和会」で、「清廉な政治は人民を穏やかにする」という意味の「政清人和」に由来している。98年、4代目会長の森喜朗氏が現在の名称に改称。改憲に強い意欲を持ち、比較的強硬な対外政策を掲げる「タカ派」として知られる。2000年以降、森氏、小泉純一郎氏、安倍氏、福田康夫氏が首相に就いた。 【東京新聞 2023年12月10日 06時00分】
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